冬になると肩こりがつらくなるのはなぜ?~冷えでガチガチになる“冬の肩こり”のしくみと対策~
目次
1. はじめに
気温が下がってくると、
- 「寒くなると肩がガチガチに固まる」
- 「コートやマフラーを巻いた日は、夕方には首こり・肩こりがピーク」
- 「朝起きると首肩が重くて、しばらく動かしたくない」
こんな感覚を訴える方が、一気に増えてきます。
私が整体院でお話をうかがっていても、冬場の松本は「肩こり・首こり」の相談がぐっと増えます。
特徴的なのは、
- お風呂に入っている間はラク
- 布団の中でも温まってくると少し軽くなる
- ただ、日中のデスクワークや外出で、またすぐにつらくなる
という「冷え」とセットになったパターンが多いことです。
この記事では、
- 冬の肩こり・冷えによる肩こりが起こりやすい理由
- からだの中で起きていること(関節・筋肉・筋膜・神経・感覚の視点)
- 日常のクセとの関係
- 今日からできるシンプルなセルフケアの方向性
を、専門用語をかみ砕きながら整理していきます。
「年中肩こりだけど、冬はとくにつらい…」
「冷え性もあって、首・肩まわりだけいつも冷えている」
そんな方が、少しでも「だからか」と納得できて、具体的な対策のイメージが持てる内容を目指します。
2. いま話題の「冬の肩こり」「冷えによる肩こり」って、結局なんなのか?
まず、よく聞く言葉をざっくり整理してみます。
- 一般的な「肩こり」
多くは、首から肩・背中にかけての筋肉(僧帽筋・肩甲挙筋・菱形筋など)が疲れたり、血行不良で張っている状態を指します。 - 「四十肩・五十肩(肩関節周囲炎)」
腕を上げる・ひねる動作で肩関節の中に強い痛みが出て、可動域も大きく制限される病態です。いわゆる「肩が上がらない」タイプ。 - 「首の神経が原因の痛み(頚椎症性神経根症など)」
首の骨や椎間板の変化により、腕に伸びる神経が圧迫され、肩~腕・手にかけてのしびれ・鋭い痛みが出るものです。Physiopedia
ざっくり比べると、こんなイメージです。
| 用語 | おおまかな状態・特徴 |
|---|---|
| 一般的な肩こり | 筋肉の疲労・血行不良による張り感・重だるさ |
| 四十肩・五十肩(肩関節周囲炎) | 肩関節の炎症。腕を上げる・ひねると強い痛み・可動域制限 |
| 首の神経由来の痛み | 首〜腕にかけてのしびれ・鋭い痛み。神経根の圧迫が原因 |
冬に悪化する「冬 肩こり」「冷え 肩こり」という相談の多くは、
この中の「一般的な肩こり」がベースにあって、
- 冷えで血行が悪くなる
- 厚着・コートで肩まわりの動きが減る
- 寒さで無意識に肩をすくめる
- 自律神経が交感神経寄りになり、筋肉のこわばりが強くなる
といった要素が重なり、首こり・肩こりが強く出ているケースがほとんどです。
一方で、
- 片側だけ強い痛み+腕のしびれがある
- 夜中にうずくような痛みで眠れない
- 発熱・倦怠感を伴う
などの症状がある場合は、単なる「冬の肩こり」ではなく、
肩関節の炎症や神経のトラブル、内科的な病気が隠れていることもあります。
この記事では、あくまで「冷え×姿勢×使い方」で強くなっているタイプの冬の肩こりを中心に話を進めますが、
途中で「これはちょっと要注意」というポイントも触れていきます。
3. からだの中で起きていること
冬の肩こりを、関節・筋肉・筋膜・神経・感覚の5つの視点から見てみます。
関節:肩甲胸郭関節・頚椎・胸椎の動きが小さくなる
肩の動きは、腕の骨だけでなく
- 肩甲骨が肋骨の上をすべる動き(肩甲胸郭関節)
- 背骨の上の方(頚椎・胸椎)
の連動で成り立っています。
冬は、
- コートやダウンで肩まわりがかさばる
- マフラーやハイネックで首の回旋が制限される
- 寒さで背中を丸めやすい(猫背・巻き肩)
といった条件がそろうため、肩甲骨や胸椎の動きが小さくなりやすい季節です。
関節の動きが減ると、その周囲の筋肉や筋膜も「動かなくていいモード」になり、
結果として血流が落ち、固まりやすくなります。
筋肉:表層の筋肉が「働きすぎ」、インナーマッスルが「さぼりがち」
冬の肩こりで硬くなりやすいのは、
- 僧帽筋(首〜肩〜背中を覆う大きな筋肉)
- 肩甲挙筋(首の骨と肩甲骨をつなぐ筋肉)
- 大胸筋・小胸筋(胸の前で肩を前に引っ張る)
といった「表層の筋肉」です。
寒さを感じると、人は無意識に肩をすくめて首まわりを守ろうとします。
このとき、上記の筋肉がずっと力を入れっぱなしの状態になり、筋肉のこわばり・筋疲労がたまりやすくなります。
一方で、
- 肩甲骨を下げて安定させる下部僧帽筋・前鋸筋
- 背骨を支える深層筋群
などのインナーマッスルは、座りっぱなし・動かなさによって働く機会が減り、「さぼりがち」になっていきます。
この「働きすぎの表層筋」と「さぼりがちなインナーマッスル」のアンバランスが、
冬の肩こりを長引かせる大きな要因です。
筋膜:肩甲帯から胸・腕へ伸びるラインが引っかかる
筋膜は、筋肉や臓器を包むうすい膜のネットワークです。
肩こりの場合、
- 首の後ろ~肩甲骨~背中
- 鎖骨の下~胸~腕
といった筋膜ラインが、冷えや動かなさによって「滑りにくい」「ねじれている」状態になると、
動き出しの違和感や、重たいだるさにつながります。
とくに冬は、厚着で腕を大きく振らずに歩くことが多く、
この筋膜ラインが十分にストレッチされません。
その結果、肩甲骨を動かそうとしても「どこかで引っかかる」ような感覚が生まれます。
神経・自律神経:冷えと交感神経優位
冷えを感じると、からだは熱を逃がさないように
- 末梢の血管をぎゅっと細くする(血管収縮)
- 筋肉に少し力を入れて震えを起こす準備をする
といった反応を取ります。これらは、交感神経が優位になることで起こる変化です。
生理学的にも、寒冷環境では皮膚や筋肉への血流が減少し、熱を守る代わりに末梢は冷えやすくなることが知られています。NCBI
また、北欧の大規模な調査研究では、
「冷たい環境で長時間働く人ほど、首や肩・腰の慢性的な痛みを訴える割合が高かった」
という結果が報告されています。BMJ Open+1
私たちの日常レベルでも、
- 冷たい外気
- 職場や家の中との温度差
- 冷気が直接当たる席(窓際・出入口付近 など)
によって、首・肩まわりの筋肉と自律神経にストレスがかかりやすい状況が続きます。
感覚:自分の姿勢や力み具合の「ズレ」
冬の肩こりの方と話していて感じるのは、
- 肩をすくめている自覚がない
- 首が前に出ている姿勢に「慣れていて」、真っすぐとの違いが分かりにくい
- 「力を抜いてください」と伝えても、どこをどう緩めればいいか分からない
という「感覚のズレ」があるケースが多いことです。
冷えやストレスで交感神経が優位な状態が続くと、
からだは常に「少し身構えた」ようなモードになります。
その状態に慣れてしまうと、本人の中ではそれが「普通の感覚」になり、
余計な力みや、首肩のこわばりに気づきにくくなります。
お風呂に入るとラクだけれど、すぐ戻ってしまうのは、
- 温まって一時的に血行が良くなる
- からだが緩んで、「本来の軽さ」に近づく
- 風呂上がりに同じ姿勢・同じクセで過ごす
- 冷えやすい環境に戻って、また筋肉が防御モードになる
というループがあるからです。
「温めるだけ」で終わらせず、「そのあとどう使うか」まで整えていくことが、冬の肩こり対策のポイントになります。
4. 日常のクセと「冬 肩こり」の関係
冬の肩こりは、「冷え」と「日常のクセ」がセットになっていることがほとんどです。
よく見られるパターンを、いくつか挙げてみます。
デスクワーク+冬の室内環境
暖房の効いた部屋でも、
- 足元だけ冷える
- 窓際だけ冷気が残る
- 体は温かいのに、首だけエアコンの風が当たる
という、ちょっとアンバランスな環境で長時間座っている方は多いです。
研究レベルでも、長時間の座位姿勢・前かがみ姿勢と首・肩の痛みの関連は、
オフィスワーカーの調査を中心に、何度も報告されています。PMC+2SpringerLink+2
- 長く座りっぱなし
- 画面が低く、頭が前に出る
- 肩甲骨が広がって、背中が丸まる
この姿勢に、冬の「冷え」と「運動量の減少」が重なることで、
首こり・肩こりが悪化しやすい状況ができあがります。
私自身も、パソコン作業が続いた日には、首肩の重さを感じることがあります。
「専門家だから完璧な姿勢」というわけではなく、
意識してこまめに立つ・肩甲骨を動かす工夫をしないと、からだはすぐラクな(=固まりやすい)ほうに流れていきます。
通勤・外出時の「防御姿勢」
外を歩いているとき、気づくと肩をすくめていませんか?
- 冷たい風から首を守るクセ
- 重いコートやカバンで、肩を引き上げてしまうクセ
- 手をポケットに入れて、腕を全然振らない歩き方
これらはどれも、僧帽筋や肩甲挙筋に負担をかけ、
肩甲骨の動きを小さくしてしまいます。
マフラーやストールも、首を温めるにはとても良いアイテムですが、
- ぐるぐる巻きで首がほとんど回らない
- 常にすこしうつむき姿勢になる
といった巻き方だと、「首の動きが減る」というデメリットも出てきます。
家事・育児の前かがみ姿勢
冬は洗濯物の室内干しが増えたり、
キッチンの足元が冷えて、つい体を丸めて家事をしてしまう方も多いです。
- 食器洗いで前かがみ
- 洗濯物をカゴから何度もすくい上げる
- 子どもを抱き上げるとき、いつも同じ側の腕
などの動きが、首こり・肩こり・背中のこわばりにつながります。
Q&A:冬の肩こりのよくある疑問
### Q1. 冬の肩こり、ストレッチで悪化することはありますか?
強く反動をつけるストレッチや、痛みをガマンして限界まで伸ばすやり方は、
筋肉や筋膜をかえって緊張させてしまうことがあります。
- 「気持ちいい〜ちょっと手前」くらいの伸び感で止める
- 反動はつけず、呼吸に合わせてじわっと伸ばす
- 10〜20秒を数回、こまめに行う
といった程度であれば、むしろ肩こり予防に役立つことが多いです。
ストレッチ中に「ピリッ」としたしびれや鋭い痛みが走る場合は、
神経を引っ張りすぎている可能性もあるので、その動きは中止して専門家への相談をおすすめします。
### Q2. どのくらいの症状なら、整形外科を受診したほうがいいですか?
次のような状態があれば、冬の肩こりというより「別の病気」を疑った方が安全です。
- 肩だけでなく、腕や手に強いしびれ・力が入らない感じが出てきた
- 首を少し動かすだけで、ビリッと腕まで痛みが走る
- 転倒・交通事故などのあとから急に強い痛みが出た
- 発熱・倦怠感・夜間のうずくような痛みを伴う
こうした症状がある場合は、まず整形外科などの医療機関での評価を受けてください。
画像検査が必要なケースや、内科的な原因が隠れているケースもあります。
### Q3. 湿布や痛み止めだけに頼っていても大丈夫でしょうか?
湿布や痛み止めは、「つらさを一時的に和らげる」うえではとても助けになる道具です。
ただ、整形外科学会の腰痛ガイドラインなどでも、慢性的な痛みに対しては
- 過度な安静よりも、適度な運動や姿勢・生活習慣の見直しを重視することjournaloforthopaedicscience.com
が推奨されています。
肩こりも同じで、
- 痛みを和らげるケア(湿布・温め・薬)
- 痛みをつくりにくいカラダの使い方(姿勢・インナーマッスルの働き)
の両方に目を向けることで、
「冬だけ毎年つらい」というサイクルから抜け出しやすくなります。
5. おわりに 〜今日からできる小さな一歩〜
ここまで、冬の肩こり・冷えによる肩こりを
- 関節・筋肉・筋膜・神経・感覚の視点
- 日常のクセとのつながり
から見てきました。
最後に、「今日から試せる小さな行動」を、いくつか整理しておきます。
| 行動のヒント | イメージ |
|---|---|
| 1時間に1回、30秒だけ肩甲骨を動かす(前まわし・後ろまわし) | 表層のこりをほぐしつつ、深層筋に「そろそろ出番だよ」と知らせる |
| コート・マフラーは「軽さ」と「首の動かしやすさ」も意識して選ぶ | 防寒しつつ、関節・筋膜の動きを奪いすぎない工夫 |
| 首・肩まわりを直接温める時間をつくる(カイロ・ネックウォーマーなど) | 末梢の血流を助け、自律神経を少し副交感神経寄りに戻す |
| デスクでは「足裏を床につける+骨盤を立てる」をひとつの目標にする | 土台を安定させて、首肩にかかる負担を分散させる |
全部を一度にやろうとすると、かえって続きません。
気になったものを、まず一つだけ選んでみてください。
冬の肩こりは、「冷え」と「姿勢・使い方」と「感覚のクセ」がセットになって起きていることが多いです。
温めるケアも大事ですが、そのあとに
- 肩甲骨を少し動かす
- 姿勢を整える
- からだの感覚をもう一度確かめる
といったステップを足してあげると、じわじわと変化が見えやすくなります。
それでも
- 朝起きるたびにつらい
- 湿布やマッサージでその場しのぎになっている気がする
- 自分なりにストレッチしても、いまいちスッキリしない
という場合は、一人で抱え込まず、整形外科やリハビリテーション科、整体院などの専門家に相談してみてください。
整体りびるどのような「からだの使い方」や「感覚」を一緒に見直すスタイルの整体では、
冬の肩こりをきっかけに、首肩だけでなく全身のバランスを整えていくこともよくあります。
冬の間じゅう、首肩がガチガチのまま我慢する必要はありません。
できそうなところから一つずつ整えていけば、からだはちゃんと応えてくれます。
ゆっくりで大丈夫なので、ご自身のペースで試してみてください。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。







