「いつのまにか骨折」とは?背中の痛み・身長低下の原因と整え方
「最近、なんだか背中が丸くなってきた気がする」「身長を測ったら、若いころより2〜3センチ低くなっていた」「特に転んだ覚えもないのに、背中や腰がずっと重だるい」。
そんな状態で整形外科を受診したら、「いつのまにか骨折がありますね」と言われてびっくり…という方が少なくありません。
“骨折”と聞くと、大きく転んだり、スポーツで怪我をしたりというイメージが強いですが、実は骨粗しょう症などが背景にあると、「気づかないうちに背骨がつぶれている」ことがあります。医学的には「骨粗鬆症性脊椎圧迫骨折」と呼ばれ、多くは加齢や生活習慣と関わっています。一宮市立市民病院+1
この記事では、「いつのまにか骨折」がなぜ起こるのか、放っておくと何が問題なのか、そして日常でどんなケアができるのかを、構造・感覚・神経の3つの視点から丁寧にまとめていきます。
目次
深堀りQ&Aブロック
Q. レントゲンで「いつのまにか骨折」と言われました。これってどんな骨折で、どこまで心配すべきですか?
A.
一言でいうと、「気づかないうちに背骨(椎体)がつぶれてしまった状態」です。多くは骨粗しょう症を背景とした脊椎圧迫骨折で、転倒など大きな衝撃がなくても、日常の動作やくしゃみなどの軽い負荷で起こります。一宮市立市民病院+1
すぐに命に関わるものではありませんが、放置すると背骨の変形が進み、慢性的な腰背部痛・身長低下・猫背・呼吸機能低下・次の骨折リスク上昇などにつながることがわかっています。国立バイオテクノロジー情報センター+1
ただし、多くのケースは「状態を理解し、骨・筋肉・姿勢のケアを続けていけば、進行を抑えたり、痛みを軽くしたりできる」ものでもあります。この記事で、仕組みと整え方を一緒に深堀りしていきましょう。
「いつのまにか骨折」の現象の整理と、よくある誤解
「いつのまにか骨折」は、医学的には骨粗鬆症性脊椎圧迫骨折と呼ばれます。背骨の一つひとつ(椎体)が、押しつぶされたように変形してしまう骨折です。
1)どこで、どんなふうに起きている?
- 多くは胸椎〜腰椎の移行部(いわゆる“背中と腰の境目”あたり)に起こりやすい
- 1つだけでなく、その上下の椎体にも「ドミノ倒し」のように連鎖的に骨折が広がることがある松戸市医師会+1
- 痛みがほとんど出ない、もしくは「少し腰が重い」程度で済んでしまうことも多く、気づかれないまま進行する
実際、骨粗鬆症性椎体骨折の多くは医療機関を受診せず、画像検査で偶然見つかるものも多いと報告されています。あるレビューでは「椎体骨折の最大7割が自覚症状に乏しく、見逃されている可能性がある」とも指摘されています。フィジオペディア+1
2)「年だから仕方ない」「筋力不足だけ」の誤解
よく聞くのが、
- 「年だから、背中が丸くなるのは仕方ない」
- 「筋力が落ちているだけで、骨までは問題ないと思う」
- 「たまたま腰痛があるだけで、骨折というほどでは…」
といった考え方です。
もちろん加齢や筋力低下(サルコペニア)は大きな要因ですが、「いつのまにか骨折」は骨そのものの質の低下(骨粗しょう症)+筋肉・姿勢・生活習慣の複合的な問題として捉える必要があります。国立長寿医療研究センターの情報でも、「いつの間にか骨折は骨密度低下だけでなく、筋肉の減少(サルコペニア)も強く関わる」とされています。ncgg.go.jp
また、日本人高齢女性を対象とした研究では、「自分で感じる猫背」と「身長低下」が、椎体骨折の存在と数と明確に関連していたことが報告されています。Nature
つまり、「最近背が縮んだ」「背中が丸くなった気がする」という自覚は、単なる“老化”ではなく、背骨の骨折サインの可能性もあるのです。
3)知らないうちにQOL・寿命にも影響する
脊椎圧迫骨折は、以下のような影響を及ぼすことがわかっています。
- 慢性的な腰背部痛
- 身長低下・円背(猫背)
- 呼吸機能低下(前かがみ姿勢により肺が膨らみにくくなる)Orthobullets
- 活動量低下 → 筋力低下 → さらなる骨折リスク増加
- 複数骨折がある人では、ない人に比べて死亡率が高いという報告もある国立バイオテクノロジー情報センター+1
「いつのまにか骨折」は、“放っておいてもいい軽い骨折”ではなく、生活の質や健康寿命にじわじわ影響する慢性的な状況と捉えておくことが大切です。
原因の深堀り(構造 × 神経 × 感覚)
構造(関節・筋肉・ファシア)
構造面のキーワードは、
- 骨の質(骨密度・微細構造)
- 背骨のアライメント(並び方・カーブ)
- 筋肉・筋膜・靭帯のバランス
の3つです。
1)骨の質:骨粗しょう症という土台
「いつのまにか骨折」の最大の背景因子は骨粗しょう症です。日本のガイドラインでも、50歳以上の男女で椎体・大腿骨近位部などの脆弱性骨折がある場合、骨粗しょう症として治療対象とすることが示されています。PMC
- 骨密度が若年成人の70%を下回ると、「いつ骨折してもおかしくない状態」とされる
- 骨粗しょう症は閉経後女性に多いが、男性も加齢とともに増加
- ビタミンD不足・運動不足・喫煙・多量飲酒なども骨折リスクを高めるResearchGate+1
「骨がスカスカになっている土台」に、日常の軽い負荷が積み重なることで、ある日“コトン”と椎体がつぶれてしまうイメージです。
2)筋肉・筋膜の支え(サルコペニアとの関係)
骨は、筋肉の支えがあってこそ余計な負担を減らせます。サルコペニア(加齢性筋肉減少症)は、高齢者の約4人に1人にみられるとも言われ、特に背筋や太ももの筋力低下が顕著です。ncgg.go.jp
- 背骨を支える筋肉が弱くなる
→ 背中が丸まりやすくなり、椎体の前側に負担集中 - お腹・骨盤周りの筋肉が働きにくい
→ 体幹全体の“柱”としての機能が落ちる - 筋膜(ファシア)の硬さ・ねじれ
→ 一部にテンションが集中し、特定の椎体にストレスがかかりやすい
こうした「支えの弱さ」が、骨の弱さと重なると、「転んでもいないのに、背骨がつぶれる」という状況が起こりやすくなります。
3)背骨のアライメントと“ドミノ骨折”
椎体の圧迫骨折は、胸椎〜腰椎移行部に多く、一度骨折すると、その上下の椎体にも連鎖的に新たな骨折が起きやすいことが知られています。松戸市医師会+1
- 1つの椎体がつぶれる
→ カーブが強くなり、別の椎体に負荷集中
→ そこもつぶれて、さらに前かがみ姿勢が強くなる
この“ドミノ現象”が進むと、背骨全体のバランス(サジタルバランス)が崩れ、内臓や呼吸にも影響してきます。www.elsevier.com+1
自律神経・呼吸・脳の防御反応
骨折は「構造の問題」でもありますが、同時に「神経の問題」でもあります。
1)痛みは「危険信号」=脳の防御反応
近年の痛み科学では、「痛みは、脳が“身体が危険だ”と判断したときに出す防御反応」であると説明されています。PubMed+1
- 骨折直後は、組織の損傷+脳の危険判断による強い痛み
- 時間がたっても不安や恐怖が強いと、脳は「まだ危ない」と判断し続け、痛みを長引かせることがある(中枢性感作)PMC+1
一方で、「いつのまにか骨折」のように、骨折があっても痛みがほとんど出ないケースもあります。これは、脳が「そこまで大きな危険ではない」と判断している、もしくは他の情報にかき消されている場合もあります。
2)自律神経・呼吸とのつながり
痛みや不安が続くと、交感神経(“戦う・逃げる”モード)が優位になりやすくなります。
- 体がこわばる
- 呼吸が浅く、胸だけでの呼吸になりがち
- 余計な筋緊張が続き、痛みの悪循環に
逆に、横隔膜をしっかり使ったゆったりした呼吸は、副交感神経(“休む・回復する”モード)を優位にし、筋肉や関節の緊張をほどく方向に働いてくれます。
「骨折=骨だけの問題」ではなく、「脳と自律神経がどう身体を守ろうとしているのか」という視点を持つと、ケアの幅が大きく広がります。
意識・心理・安心感の影響
1)「怖さ」が痛みを増幅させる
- 「また骨折したらどうしよう」
- 「もう二度とまっすぐ歩けないのでは」
- 「この痛みは一生続くのでは」
こうした予測や不安は、痛みを感じる神経系と深くつながっています。慢性痛の研究では、「痛みそのもの」だけでなく、「痛みに対する恐怖」や「 catastrophizing(最悪の想像)」が痛みの強さ・長期化に影響することが示されています。J-STAGE+1
2)安心感が“戻る力”を引き出す
一方で、
- 状態を正しく理解できること
- 信頼できる専門家と一緒に方針を決められること
- 自分にできる小さなケアを知っていること
は、脳にとって「大きな安心材料」です。安心できると、過剰な防御反応(余計な筋緊張・痛みの過敏さ)は少しずつ落ち着きやすくなり、**身体本来の“戻る力”**が働きやすくなります。
ここを責める必要はまったくなくて、「怖くて当然」「不安で当然」という前提に立ちながら、少しずつ“身体との付き合い方”を変えていくことが大切です。
臨床で見えてきたこと(理学療法士としての視点)
ここからは、理学療法士としての臨床経験から見えてきた「いつのまにか骨折」の方に共通する特徴や、整体りびるどとして大切にしている視点をお話しします。
1)よく見られるパターン
「いつのまにか骨折」が背景にある方で、よく見られるのはこんな特徴です。
- いつの間にか前かがみ姿勢が当たり前になっている
- お腹・背中の“インナー”の働きが弱く、腰周りだけで頑張っている
- 歩くとき、足裏でしっかり床を押せず、ペタペタと小股歩きになっている
- 息が浅く、胸だけが上下している呼吸パターン
- 「また痛くなりそう」と常に腰や背中をかばって動いている
これらは、単に「筋力が弱い」「姿勢が悪い」ではなく、身体全体の使い方のパターンとして固まってしまっている状態、と言えます。
2)整体りびるどの施術スタイル(構造 × 感覚 × 神経)
整体りびるどでは、「いつのまにか骨折」そのものを“治す”というよりも、
- これ以上の変形・骨折の連鎖を防ぐ
- 痛みやこわばりを和らげ、動きやすい身体を取り戻す
- 自分で整えられる感覚を育てる
ことを目的に、以下の3つの軸で施術を組み立てています。
構造:関節・筋・ファシアを整える
- 胸椎〜腰椎、肋骨、骨盤帯の動きを細かく評価し、「動きの出しづらいセグメント」を見つける
- 背骨だけでなく、股関節・膝・足首など、体幹を支える下半身からの連鎖も整える
- 筋膜(ファシア)のねじれ・硬さをやさしく解放し、「前側に引っ張られる力」と「後ろ側が支える力」のバランスを整える
こうした構造調整は、椎体そのものを元の形に戻すわけではありませんが、残っている構造でできる限りベストなバランスを作るイメージです。
感覚:足裏・皮膚・深部感覚・ボディマップ
- 足裏3点(母趾球・小趾球・かかと)で床を感じる練習
- 背中・腰周りの皮膚や筋肉に軽いタッチを入れ、「どこに重さが乗っているか」を感じやすくする
- 呼吸に合わせて肋骨や背骨がどの方向にふくらむか、一緒に確認する
こうした「感覚の再入力」は、脳の中にある**身体地図(ボディマップ)**をクリアにしていく作業でもあります。ボディマップの精度が上がると、過剰な防御反応が落ち着き、動きのぎこちなさも少しずつ解けていきます。Herman Wallace+1
神経:中枢・自律神経・防御反応を穏やかに
- 痛みの仕組みや「いつのまにか骨折」の特徴を、できるだけわかりやすく共有
- 安心して動ける範囲から、少しずつ動きを増やしていく(早期からの適切なモビライゼーションが、痛みの長期化を防ぐという研究も増えています)J-STAGE+1
- 呼吸・目線・足裏感覚を組み合わせて、自律神経の過緊張をゆるめる
この3つを組み合わせることで、「怖くて動けない」状態から「ここまでなら動いても大丈夫そう」に変えていくことを大切にしています。
日常でできる小さな実践(セルフケア)
ここからは、「いつのまにか骨折」がある・もしくは疑われる方でも、比較的安全に取り組みやすいセルフケアをいくつかご紹介します。
※明らかな強い痛み・しびれ・歩行困難などがある場合は、必ず医師に相談のうえ、無理のない範囲で行ってください。
セルフケア1:椅子でできる「背中の呼吸リセット」
- 目的:背骨まわりのこわばりをほどき、自律神経を整える
- やり方
- 安定した椅子に浅めに腰かける
- 足裏全体を床につけ、軽く背すじを伸ばす(力を入れすぎない)
- 両手を肋骨の横〜下あたりに添える
- 鼻からゆっくり息を吸いながら、「背中側・横側の肋骨がふくらむ」のを感じる
- 口から細く長く息を吐きながら、自然に背中がしゅっとしぼむのを感じる
- これを1セット5〜6呼吸、1日2〜3回を目安に
- 注意点
- 背中に痛みが強く出る場合は無理をしない
- 「大きく吸う」よりも「ゆっくり・静かに」を優先する
「今日は呼吸だけでもOK」です。しんどい日は、このケアだけでも十分“神経を整えるスイッチ”になります。
セルフケア2:足裏3点を思い出す立ち方
- 目的:前かがみ姿勢を少しでも軽くし、背骨への負担を減らす
- やり方
- 軽く足を腰幅に開いて立つ(壁があれば、軽く背中を添えてもOK)
- 足裏の「母趾球・小趾球・かかと」の3点が床につく感覚を探す
- かかとにだけ体重が乗っている場合は、ほんの少しだけ体を前に移動し、足裏全体に均等に乗る位置を探す
- その状態で、先ほどの“背中の呼吸”を2〜3呼吸行う
- 注意点
- めまいやふらつきが強い場合は、必ず壁や椅子につかまる
- 痛みが強い日は、立位ではなく座位で足裏を感じるだけでもOK
セルフケア3:安全な「前屈み」の練習
「前かがみが怖くてできない」という方は多いですが、安全な前屈みのやり方を覚えることで、日常の動作(洗濯物・掃除など)が少し楽になります。
- 目的:股関節から曲がる感覚を取り戻し、腰椎への過負荷を減らす
- やり方
- 椅子の前に立ち、手を椅子の背もたれに置く
- 膝を軽く曲げ、股関節から体を前に倒す(お辞儀のような動き)
- 腰だけを丸めるのではなく、「お腹と太ももが近づく」イメージで
- 痛みの出ない範囲で、ゆっくり5回ほど繰り返す
- 注意点
- 前屈みで痛みが増悪する場合は中止する
- 椎体骨折直後〜急性期は主治医の指示を優先する
セルフケア4:骨と筋肉のための「ちょい負荷ウォーキング」
- 目的:骨・筋肉・バランス能力を維持する
- やり方
- 体調に合わせて「5〜10分だけでも良いので、少し早歩き」を日課に
- 足裏で地面を押し出す感覚を意識しながら歩く
- 日光に当たることでビタミンD合成もサポート(骨のために大切)ResearchGate+1
- 注意点
- 転倒リスクが高い場合は杖やシルバーカーを使用する
- 坂道や段差の多い道は避ける
「今日は3分しか歩けなかった…」という日があっても大丈夫です。「ゼロにしない」ことが、骨と筋肉にとっては大きな意味を持ちます。
セルフケア5:不安を言葉にする(ミニ“心のケア”)
- 目的:不安や恐怖を整理し、痛みの悪循環をほどくきっかけに
- やり方
- 紙やメモ帳に、「骨折について不安なこと・怖いこと」を思いつくままに書き出す
- その中から「これはお医者さんに聞きたい」「これは自分で調べてみたい」という項目に印をつける
- 次の受診時や相談の場で、順番に確認していく
- 注意点
- 「こんなこと聞いていいのかな」と遠慮しすぎない
- 一度に全部解決しようとせず、1つずつでもOK
“身体のケア”と同じくらい、“不安の整理”も大事なセルフケアです。頭の中でグルグルしているだけより、文字にして外に出してあげることで、少し呼吸がしやすくなる方が多い印象です。
まとめ|「いつのまにか骨折」と、整える・感じるという視点
最後に、「いつのまにか骨折」について押さえておきたいポイントを整理します。
- 「いつのまにか骨折」は、主に骨粗しょう症を背景とした脊椎圧迫骨折
転倒など大きなケガがなくても、日常動作の中で背骨がつぶれてしまうことがあり、多くは胸椎〜腰椎移行部に起きます。一宮市立市民病院+1 - 痛みが軽くても、身長低下・猫背・背中のだるさがサインになる
自覚する猫背や身長低下は、隠れた椎体骨折と関連していることが報告されています。Nature+1 - 放置すると、骨折の連鎖・呼吸機能低下・QOL低下につながる
1つの椎体骨折は次の骨折リスクを高め、複数骨折は死亡率にも影響するというデータもあります。国立バイオテクノロジー情報センター+1 - 構造×神経×感覚の3つを整えることで、“戻る力”を引き出せる
骨そのものを元の形に戻すことは難しくても、- 骨・筋肉・姿勢のバランス(構造)
- 痛みの仕組みや自律神経へのアプローチ(神経)
- 足裏や背中の感覚、呼吸の心地よさ(感覚)
を整えていくことで、痛みやこわばり・不安が少しずつ軽くなっていきます。
- 「がんばりすぎないセルフケア」を続けることが一番の予防策
完璧を目指さなくて大丈夫です。- 今日は呼吸だけ
- 今日は3分だけ歩く
- 今日は不安を書き出してみる
そんな“小さな一歩”の積み重ねが、「いつのまにか骨折」の進行を抑え、次の骨折を防ぐ大事な土台になります。
身体は、本来「戻る力」をたくさん持っています。
「整える」というのは、単に姿勢や骨の形を正すことではなく、自分の身体の感覚を取り戻し、“大丈夫かもしれない”と感じられる範囲を少しずつ広げていくことでもあります。
もし、「自分ももしかして…」と不安になったら、ひとりで抱え込まずに、検査や相談の場を上手に活用していきましょう。そのプロセス自体が、すでに“整える一歩”になっています。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
お身体のお悩み等ありましたら、お気軽に松本市岡田の整体りびるどにご相談ください。







