身体が冷えると肩こりが悪化するのはなぜ?──代謝と自律神経の深い関係
気温が下がる季節になると、「肩がガチガチにこる」「首まで固まってくる」と相談いただくことが増えます。多くの方は「冷えると血流が悪くなるから」と考えますが、実際にはそれだけでは説明できません。
冷えによって変化するのは、血流だけでなく、代謝のはたらき、自律神経の切り替わり、そして私たちが無意識に使っている姿勢・呼吸・感覚のパターンです。これらが複雑に重なり、肩こりとして現れます。
この記事では、単なる「冬は肩がこる季節だから」という表面的な説明ではなく、深い仕組みを整理しながら、今日からできる実践方法までお伝えします。
目次
冬に肩こりが悪化する理由──よくある誤解と本当のメカニズム
「冷えると血流が悪くなるから肩がこる」。
この説明は間違いではないものの、実際の臨床では**“血流だけでは説明しきれない肩こり”**の方が圧倒的に多いと感じます。
人が寒さを感じたとき、身体は生命を守るために“省エネモード”へ切り替わります。これが肩こり悪化のスイッチになります。
省エネモードの中心にいるのが——
**自律神経(交感神経)**です。
寒さを感じると、交感神経が優位になり、筋肉は「守る」「縮こまる」方向へ働きます。これは、身体が冷えから内臓を守ろうとする“防御反応”の一種です。
つまり、肩がこる理由は単なる筋肉の緊張ではなく、
**「身体を守るための生理的反応」**なのです。
そしてさらに、冬はもうひとつ大きな変化が起きます。
それは “代謝が落ちる” こと。
代謝とは、身体が熱を生み出す能力でもあります。代謝が落ちると体温は下がり、体温が下がると筋肉や関節の動きが悪くなり、結果として筋肉は硬さを増しやすくなります。
・体が冷える
・代謝が落ちる
・動きが悪くなる
・筋肉が固まる
・肩こりが悪化する
この流れは、冬に多くの方が体験する“季節性肩こり”の鉄板パターンです。
加えて、姿勢の変化も無視できません。寒い日は自然と肩をすくめ、胸を閉じ、呼吸が浅くなります。これは交感神経優位の姿勢であり、肩の筋肉(特に僧帽筋上部・肩甲挙筋)を余計に働かせるので、肩こりを助長します。
「冷えると肩がこる」の本質は、
血流だけでなく、代謝・自律神経・姿勢・呼吸すべてが影響し合っている という点です。
原因の深堀り(構造・神経・感覚)
①構造:冷えで固まるのは“肩”ではなく“体幹”から
臨床で肩こりを訴える方の多くは、肩そのものより背中・肋骨・体幹の硬さが先に出ます。冷えによって肋骨の動きが低下すると呼吸が浅くなり、肩周りの筋が代わりに働きすぎる状態が続きます。特に、横隔膜が硬くなると肩の動き全体が詰まり、肩こりとして現れます。
②自律神経・呼吸:冬の“交感神経の張りつめ”が肩を固める
寒さは交感神経を刺激します。交感神経が働くと筋肉は緊張し、血管は収縮し、呼吸は浅く早くなります。すると肩や首周りが常に“準戦闘モード”に入り、緩むタイミングを失います。さらに、呼吸の浅さは肩周囲の筋を過活動にし、慢性的な肩こりを生みます。
③意識・心理:冬は“縮こまる心理”が姿勢に出る
気温が低いと、人は無意識に「すくむ」姿勢をとります。この姿勢は、精神的にも内向き・緊張寄りになり、筋肉の緊張をさらに助長します。肩こりは筋肉だけの問題ではなく、“その日どんな心理状態で過ごしているか”でも大きく変わるのです。
臨床で見えてきたこと
冬に肩こりが悪化する方を施術していて、共通するポイントがあります。
それは
「肩を揉んでも改善しない肩こりが増える」 ということ。
理由はシンプルで、原因が肩以外にあるからです。
・横隔膜の硬さ
・肋骨のロック
・胸椎の可動性低下
・体幹の固さ
・足部の感覚鈍麻(冷えから)
これらがライン上につながり、肩へと影響します。
肩こりの原因が“肩単体の筋肉”だけなら、揉めばすぐ軽くなります。
でも、季節性肩こりは違います。
全体の状態が整っていないとすぐ戻る傾向があります。
実際、私は冬の施術で「肩ではなく横隔膜と体幹から整える」ことを重視します。
肩こりの80%は、体幹と呼吸の改善で大きく変わります。
日常でできる小さな実践
冬の肩こり対策には、“肩そのもの”よりも“熱をつくる身体”に注目することが大切です。
■①朝いちばんに「深い腹式呼吸」を3回
横隔膜が動くと体温が上がりやすく、交感神経の過緊張を緩めます。
■②肩をすくめてストンと落とす
10秒でできる自律神経のリセット。すくめる→脱力、のメリハリが効く。
■③背中の中央(胸椎)を温める
肩を温めるより効果が高いのが“背中”。体幹の動きが出やすくなり呼吸が深まる。
■④足裏を刺激する
冷えによる“感覚低下”は肩こりと意外に密接。足裏ケアは全身の筋緊張を下げる。
まとめ|冷え×代謝×肩こり、根本原因は“身体の節約モード”
冬に肩こりが悪化する理由は、冷えそのものだけではありません。
・代謝の低下
・交感神経の働きすぎ
・呼吸の浅さ
・姿勢の変化
・感覚の鈍り
これらが重なり、身体は“省エネの守りの姿勢”に入ります。
その結果として肩こりが強くなるのです。
大切なのは「肩を揉む」よりも、
横隔膜・体幹・呼吸・感覚のラインを整えること。
身体のスイッチが正しく入ると、冬でも肩は軽くなります。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
身体の不調等でお悩みであれば、是非お気軽に松本市岡田の整体りびるどにご相談下さい。







