季節の変わり目に悪化する“寒暖差疲労”。眠れない・だるい・頭痛の本当の理由とは?
最近の松本は、朝晩の冷え込みが一段と強くなりました。11月20日現在、朝の最低気温はついにマイナス3度。霜が降りるほどの寒さの中、「夜眠れない」「朝起きても身体が重い」「頭痛が続く」と感じる方が増えています。
「寒いだけでそんなに体調が崩れるの?」「歳のせい?」と不安に思うかもしれませんが、実は季節の変わり目には“寒暖差疲労”と呼ばれる状態が起きやすく、自律神経のバランスが揺らぎやすいのです。
ネットを見ると「寒暖差アレルギー」「自律神経の乱れ」といった言葉が多く並びますが、仕組みを丁寧に見ていくと、呼吸の浅さ・深部体温の乱れ・体内時計のずれなど、もっと具体的な背景が見えてきます。
この記事では、眠れなさ・だるさ・頭痛が“なぜこの時期に”悪化するのか、その理由を専門的に、分かりやすく解説します。
目次
Q. 季節の変わり目になると眠れなくなるのは、“寒暖差疲労”のせいですか?
はい、多くの方に当てはまります。寒暖差が大きい時期は自律神経が頻繁に切り替わり、深部体温・呼吸・血流の調整が追いつかなくなります。その結果として、眠れない・だるい・頭痛が起きやすくなります。
大きな病気ではなく、「環境の変化に身体が過敏に反応している状態」です。整えていけば多くの方が改善していきます。この記事で詳しく解説します。
現象の整理と、よくある誤解
季節の変わり目、特に朝の冷え込みが強くなるタイミングで、
- 「夜なかなか寝つけない」
- 「眠っても何度も目が覚める」
- 「朝から頭が重くて、一日ずっとだるい」
こうした訴えが一気に増えてきます。病院で検査しても「特に異常なし」と言われることも多く、「気のせいかな」「歳のせいかな」と片づけてしまいがちなところです。
世間では、こんな捉え方をされることがよくあります。
- 気温差に体がついていけない「単なる疲れ」
- 年齢とともに仕方ない“自律神経の乱れ”
- ストレスの一言で片づけられてしまう不調
もちろんストレスや加齢もゼロではありませんが、ポイントは “気温差”そのものが、体の調整システム(自律神経・体内時計)にかなり負荷をかける という点です。
実際、気温や気圧の変化が自律神経と体調に影響することは、いくつかの研究でも示されています。例えば、気候変動と頭痛・倦怠感などの症状が関連するという報告や、気温変化が交感神経活動を高めることで心拍や血圧を変化させることなどが示されています。
ここで大事なのは、
「気温差に弱い自分が悪い」のではなく、
「調整する仕組みがフル稼働して疲れている状態」
と理解してあげることです。
“寒暖差疲労”は、体のサボりではなく、「よく働きすぎてしまっているサイン」です。
原因の深堀り(構造 × 神経 × 感覚)
構造(胸郭・血管・筋肉・ファシア)
寒暖差疲労というと「自律神経」のイメージが強いですが、その土台にはちゃんと “構造”の変化 があります。
気温差が大きいとき、体の表面ではこんなことが起きています。
- 急に冷える → 皮膚の血管がキュッと縮む(熱を逃がさないため)
- 肩まわり・背中・首まわりの筋肉がこわばる(体温を守るため)
- 胸郭(肋骨+背骨+筋肉)が硬くなり、呼吸が浅くなる
胸郭が固まって呼吸が浅くなると、「酸素と二酸化炭素の交換」「心臓への血液の戻り」「脳への血流」など、全体の循環システムにも影響が波及します。
さらに、筋膜やファシア(全身を包む膜)のテンションも変わりやすく、
- 首まわりが重い
- 頭が締め付けられるように痛い
- 肩甲骨~背中が常に張っている
といった“構造としての負荷”が積み重なります。
構造がこわばればこわばるほど、脳は「この体、ちょっとピンチかも」と判断しやすくなり、自律神経の緊張モードも抜けにくくなっていきます。
自律神経・呼吸・体内時計・脳の防御反応
寒暖差疲労の主役は、やはり 自律神経 と 体内時計(サーカディアンリズム) です。
自律神経はざっくり言うと、
- 活動モード:交感神経(戦闘・仕事用)
- 休息モード:副交感神経(リラックス・回復用)
の2つを自動で切り替えてくれるシステムです。
季節の変わり目で気温差が大きいと、この切り替えがこうなります。
- 朝晩の冷え → 体温を保つために交感神経フル稼働
- 日中の気温上昇 → 再び調整し直し
- 室内と屋外の温度差 → そのたびに微調整
一日を通して、自律神経が何度も何度も“モード切替”を強いられる ことで、いわばスイッチが摩耗してきます。その結果として、
- 夜になっても交感神経モードが抜けない(眠れない)
- 寝ている間も浅く緊張したまま(睡眠の質が落ちる)
- 朝起きたときに疲れが取れていない(だるさ)
という状態になりやすくなります。
そこに関わってくるのが 体内時計 です。
本来、体内時計は「朝の光」「体温のリズム」「食事のタイミング」などでリセットされていますが、寒暖差で体温リズムが乱れたり、眠りの質が落ちたりすると、このリズム自体が少しずつズレていきます。
その結果、
- 夜になっても体が“昼仕様”のまま(交感神経↑)
- 深部体温が下がりきらないまま布団に入る(寝つけない)
- 夜中に目が覚めやすくなる(睡眠の分断)
という、「眠りたい時間」と「体の準備」が一致しない状態になりやすいのです。
意識・心理・安心感の影響
もう一つ、見逃せないのが 心理的な要素 です。
- 「また眠れなかったらどうしよう」
- 「このだるさ、何か怖い病気の前触れかも」
- 「朝起きるのが憂うつで、布団から出たくない」
こうした思いや不安は、脳にとっては立派な「ストレス刺激」です。
脳は「危険が近づいている」と判断すると、交感神経をさらに高めて体を守ろうとします。
結果として、
- リラックスしたくても、体がブレーキを踏めない
- 横になっても頭だけがギンギンに動き続ける
- 寝る前になると余計に目が冴える
という、よくある“悪循環ループ”に入りやすくなります。
ここで大切なのは、
「自分はダメだ」「メンタルが弱い」と責めないこと。
「寒暖差という負荷に、体と脳が一生懸命対応しようとしている」と理解すること。
この視点の変化だけでも、自律神経は少しずつ落ち着きやすくなります。
安心感は、神経系にとってとても大きな“薬”です。
臨床で見えてきたこと(理学療法士としての視点)
理学療法士として、病院・整形外科・整体の場で多くの方をみてきましたが、季節の変わり目の不調にはいくつかの共通パターンがあります。
よく見られる共通点
- 肩~首まわりが常にガチガチ(呼吸が浅い)
- 胸郭が硬く、横隔膜が十分に動いていない
- 手足が冷えやすく、体の“中心”に熱がこもっている
- 夜になるほど頭が冴えてくる感覚がある
- 休日でも「力が抜けない」「常に気が張っている」
こうした方々に共通するのは、
「自律神経を整えたくても、そもそも“整うための構造”が制限されてしまっている」 ということです。
呼吸を深くしたくても、胸郭が固まっていれば横隔膜は十分に動けません。
リラックスしようとしても、体の表面(皮膚や筋膜)が常に緊張していれば、脳は“安全”と判断しにくいのです。
整体りびるどで大切にしている三つの軸
- 構造(Structure)
胸郭・背骨・首まわりの動きを丁寧に整え、呼吸の通り道をつくる。
体幹がゆるやかに動くようになると、自律神経も切り替わりやすくなります。 - 感覚(Sensation)
足裏・手・背中・胸まわりの皮膚や深部感覚にやさしく刺激を入れ、“自分の身体の輪郭”を思い出してもらう。
脳の中のボディマップ(身体地図)がクリアになると、余計な防御反応が落ち着いてきます。 - 神経(Nerve)
呼吸リズム・姿勢・目線・左右差などを見ながら、過剰に頑張っているところとサボっているところのバランスを整える。
「頑張りすぎている神経」を少し休ませ、「眠る側の神経」が働きやすい状態に導きます。
こうして構造・感覚・神経の三軸をそろえてあげると、
「眠れる体」「目が覚めやすい朝」「動き出しやすい一日」が、少しずつ戻ってきます。
日常でできる小さな実践(セルフケア)
ここからは、季節の変わり目でも無理なく続けられる「寒暖差疲労ケア」をいくつか紹介します。全部やらなくても大丈夫です。「これならできそう」を1つだけでもOK です。
① ぬるめ夜風呂で“体内時計リセット”(入浴)
- 目的:深部体温と体内時計のリズムを整え、眠りのスイッチを入れる
- やり方:
- 就寝の1〜2時間前に、38〜40℃くらいのぬるめのお湯に10〜15分浸かる
- 肩までしっかり浸かるより、「みぞおち」くらいまでの半身浴でもOK
- ポイント:
入浴で一度深部体温を上げておくと、その後ゆるやかに下がっていく過程で眠気が出やすくなります。 - 注意点:
熱すぎるお湯(42℃以上)は交感神経を強く刺激し、逆に目が覚めてしまうことがあります。
② 「横隔膜ストレッチ呼吸」で胸をひらく
- 目的:浅くなった呼吸を立て直し、自律神経の切り替えを助ける
- やり方:
- 椅子に浅く座り、両手をみぞおちのあたりにそっと当てる
- 鼻からゆっくり息を吸いながら、お腹〜脇腹〜背中まで“ふくらむ”感覚を探す
- 口をすぼめて、「ふ〜」と細く長く吐く
- 3〜5呼吸だけでOK
- ポイント:
「きちんとやろう」と頑張りすぎないのがコツ。少し眠気が出るくらいがちょうど良いです。
③ 朝一番の「光+首まわりリセット」
- 目的:体内時計を朝に合わせ、自律神経のリズムを整える
- やり方:
- 起きたらカーテンを開けて、自然光を10〜15秒見る(直接太陽をじっと見る必要はありません)
- そのまま、首を前後左右に「気持ちいい範囲」でゆっくり動かす
- ポイント:
光が体内時計の“朝スイッチ”になります。首まわりをやさしく動かすことで、脳への血流もスムーズになりやすいです。 - 注意点:
めまいが出やすい方は、動きを小さく・ゆっくりに。
④ 体を“温めるポイント”だけ決めておく
- 目的:寒暖差で縮こまりやすい部位を集中的に守る
- おすすめの温めポイント:
- 首の後ろ
- 肩甲骨の間
- 腰(おへその真裏あたり)
- やり方:
カイロを直接肌につけるのではなく、1枚衣類を挟んで使用する。 - ポイント:
「手足をガンガン温める」というより、「体の中心部をじんわり温めておく」イメージが大事です。
⑤ 「全部はできない日」は、これだけでもOK
- 夜のお風呂だけ気をつける
- 朝一回だけカーテンを開けて深呼吸する
- 寒い日は首の後ろだけカイロで守る
こんな “一点集中” でも、自律神経と体内時計にはちゃんと良い影響があります。
大事なのは「続けられる小ささ」にすることです。
まとめ|「寒暖差疲労」と、整える・感じるという視点
最後に、この記事のポイントを整理しておきます。
- 季節の変わり目に出る「眠れなさ」「だるさ」「頭痛」は、寒暖差疲労として自律神経が疲れ切っているサイン のことが多い
- 気温差は、胸郭・筋肉・血管・ファシアなど“構造”にも大きな影響を与え、呼吸や血流を通して眠りの質にまで波及する
- 自律神経だけでなく、体内時計(サーカディアンリズム) が乱れることで、「眠りたい時間」と「体の準備」がズレてしまう
- 入浴・呼吸・朝の光・体を温めるポイントなど、小さな工夫で少しずつ“戻せる余地”がある
寒暖差疲労は、「自分が弱いから」起こるわけではありません。
むしろ、環境の変化に対して体が一生懸命反応してくれている結果とも言えます。
だからこそ大事なのは、
“無理に頑張らせる” のではなく、“戻れる条件” を整えてあげること。
身体は本来、戻る力を持っています。
その力が発揮されやすいように、「感じ方」「呼吸」「体の使い方」を少しずつ整えていく――それが、季節の変わり目をラクに乗り切るいちばんの近道です。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
お身体のお悩み等ありましたら、お気軽に整体りびるどにご相談ください。







