冬になると腰が痛くなるのはなぜ?~座りっぱなしで固まる“冬の腰痛”のしくみと対策~
目次
1. はじめに
冬になると、こんな感覚はありませんか。
- 朝、起きあがるときに腰がギクッと痛む
- こたつやソファでくつろいだあと、立ち上がる瞬間だけ腰が重だるい
- 在宅ワークやデスクワークの時間が増えると、夕方に腰がズーンと重くなる
整体院でも毎年、寒くなる時期から「冬になると腰が痛くなる」「座りっぱなしで固まってしまう」という相談がぐっと増えます。
特にこの松本市、冬の冷え込みは中々なのでこれからの時期は特にこういった悩みが増えますよね。
私自身も、長くデスクワークが続いた日の夜は、腰まわりが冷えて動き出しが重く感じることがあります。
冬の腰痛は、必ずしも「重い病気」を意味するわけではありません。
多くは、冷え・血行不良・長時間の同じ姿勢・運動不足といった「生活の積み重ね」で起きているケースが中心です。
この記事では、
- 冬に腰痛が出やすくなる仕組み
- 「座りっぱなし」が腰にどんな負担をかけているのか
- 日常でできる具体的な対策
- 整形外科を受診した方がよい「腰痛の受診の目安」
をやさしく整理していきます。
「朝起きるときの腰の痛み」や「長時間座ると腰が痛い」という、冬ならではの悩みのヒントになればうれしいです。
2. いま話題の「冬の腰痛」「座りっぱなし腰痛」って何なのか?
「冬腰痛」「座りっぱなし腰痛」という言葉は、病名というより**状態を表す“ニックネーム”**に近いものです。
冬の腰痛=「冷え+じっとしている時間が長い」腰
冬になると、
- 気温が下がる
- 暖房の効いた屋内でじっとしている時間が増える
- 運動量が減り、血行が落ちやすい
といった条件が重なります。
その結果、筋肉や筋膜が冷えてこわばりやすくなり、腰の関節や椎間板まわりの動きが鈍くなることで痛みや重だるさが出やすくなります。
北欧や寒冷地の研究でも、職場などで冷たい環境にさらされている人ほど、首や腰の痛み・慢性痛が多いという報告があります。BMJ Open+1
日本のように冬場の室内外の温度差が大きい環境も、からだにとっては負担になりやすい条件です。
「座りっぱなし腰痛」は病名ではなく、“負担のかかり方”のパターン
一方で、「座りっぱなし腰痛」は、
- デスクワーク
- 在宅勤務
- こたつ・ソファ・床座り
など、長時間同じ座り姿勢が続いたあとに腰が痛くなるパターンを指しています。
研究レベルでも、長時間の座位や“動かない時間”が長い人は、腰痛のリスクが中等度ながら高くなることが報告されています。PeerJ+1
さらに、座っている時間が長いオフィスワーカーでは、姿勢の崩れ(猫背・骨盤後傾)や運動不足と組み合わさることで、腰や首・肩の不調が増えやすいことも指摘されています。MDPI
多くは「非特異的腰痛」=原因がひとつに決めきれないタイプ
整形外科や腰痛のガイドラインでは、レントゲンやMRIを撮ってもハッキリした異常が見つからない腰痛を「非特異的腰痛」と呼びます。
実は、腰痛全体の8〜9割近くがこのタイプだとされており、画像所見と痛みの強さは必ずしも一致しません。整形外科学ジャーナル+1
そのため、海外・国内の多くのガイドラインでは、明らかな“危険なサイン(レッドフラッグ)”がなければ、すぐに画像検査は勧めないとされています。AAFP+1
つまり、「冬になると腰が痛い」「座りっぱなしで腰が重い」という状態の多くは、
・筋肉や筋膜のこわばり
・関節まわりの動きの悪さ
・血行不良や感覚の過敏さ
が重なった、“からだ全体のバランスの乱れ”と考えるのが実際的です。
もちろん、しびれや発熱、排尿・排便の異常などがあれば話は別で、「要注意の腰痛」として早めの受診が必要になります。
そのあたりの「腰痛の受診の目安」は、のちほど触れます。
3. 冬の腰まわりで起きていること(関節・筋肉・筋膜・神経・感覚)
ここからは、もう少しからだの中で起きていることを覗いてみましょう。
関節:骨盤後傾+腰椎の丸まりで、椎間板にジワジワ負担
冬はどうしても、丸くなって座りやすくなります。
- ソファやこたつで深く沈み込む
- 座椅子にもたれたままスマホを見る
- デスクワークで背もたれにズルズルと寄りかかる
こうした姿勢では、**骨盤が後ろに倒れ(骨盤後傾)、腰のカーブがつぶれて丸くなった状態(猫背)**になりやすくなります。
腰の骨(腰椎)は、もともと前にゆるやかなカーブ(前弯)を描いているのが自然な形です。
ここが潰れたまま長時間過ごすと、
- 椎間板の後ろ側にかかる圧力が増える
- 椎間関節の動きが偏る
- 股関節や胸椎の動きがサボり、腰に負担が集中する
といったことが起き、**「長時間座ると腰が痛い」「立ち上がりでグキッとする」**といった症状につながりやすくなります。
筋肉:表面の筋肉はガチガチ、インナーマッスルはサボりがち
寒いとき人間は、自然とからだを縮めて守ろうとします。
- 腰〜背中の表層筋(脊柱起立筋・広背筋など)は緊張しやすい
- 反対に、体幹のインナーマッスル(腹横筋・多裂筋など)は働きにくい
というアンバランスが起こりがちです。
長時間の座り姿勢では、**股関節を曲げる筋肉(腸腰筋)も縮んだまま固まりやすく、立ち上がったときに骨盤や腰椎を強く引っ張ります。
この状態で急に動こうとすると、「朝起きるときの腰の痛み」「立ち上がりの一歩目での痛み」**が出やすくなります。
ある研究では、長時間座位が続くと腰まわりの関節可動域や筋力が低下し、それが腰痛のリスク要因になりうると報告されています。jag.journalagent.com
筋膜:腰だけでなく“背中〜お尻〜太もも裏”まで一枚のシートのように
腰まわりの筋肉を包む筋膜は、背中・骨盤・お尻・太もも裏の筋肉ともつながっています。
冬の間、動きが少なく同じ姿勢が続くと、
- 背中〜腰の筋膜が張りついたように感じる
- お尻から太もも裏にかけて突っ張る
- 腰が痛いような、脚が重いような、はっきりしない感覚
といった「腰が重だるい、どこが悪いのかよく分からない」状態になりやすいです。
「腰だけを押してもあまり変わらないのに、お尻や太もも裏を緩めると腰がラクになる」ケースは臨床ではよく見られます。
これは筋膜のつながりを考えると、とても理にかなっています。
神経・自律神経:冷えとストレスで“痛みセンサー”が敏感に
神経の面から見ると、冬の腰痛には自律神経のバランスも関わります。
- 寒さ
- 年末の忙しさ
- 運動不足
- 睡眠の乱れ
が重なると、交感神経(緊張・活動のスイッチ)が優位になりやすく、筋肉のこわばりや痛みの感じやすさが増してしまいます。
慢性腰痛のガイドラインでも、「ストレス・睡眠・不安」などの心理社会的要因が、痛みの長期化と関連するとされています。整形外科学ジャーナル+1
つまり、冬の腰痛は、
・“冷え”による血行不良
・“座りっぱなし”による機械的な負担
・“ストレスや疲労”による神経の過敏さ
が重なって出てきていることが多い、ということです。
感覚:本当は少しの負担なのに、脳が「危険!」と感じやすくなる
痛みは、「からだからの信号」と「脳の解釈」の組み合わせで生まれます。
- 「またぎっくり腰になったらどうしよう」
- 「このまま動いたら悪化するかも」
といった不安が強いほど、同じ刺激でも痛みとして感じやすくなることが、近年の痛みの研究で分かってきました。MDPI
冬の朝、ちょっとした動き出しの痛みで「これはまずい」とからだが身構えると、
余計に筋肉が固まり、「立ち上がるのがこわい」「動きたくない」という悪循環にはまりやすくなります。
4. 日常のクセと「冬の腰痛」の関係
ここからは、もう少し具体的に生活のどんなクセが冬の腰痛や座りっぱなし腰痛につながっているかを見ていきます。
こたつ・ソファ・床座りの“楽ちん姿勢”が、実は腰には重労働
冬の定番アイテムであるこたつや柔らかいソファ。
気持ちよくてつい長居してしまいますが、姿勢の観点から見ると注意が必要です。
- 深く座って背もたれに寄りかかる
- あぐらや横座りで猫背になる
- 片肘をついてスマホを見る
この姿勢は、骨盤が強く後ろに倒れ、腰椎が丸まったまま固定される形になりやすく、椎間板や靭帯にじわじわと負担がかかります。
短時間なら問題ありませんが、「テレビを観ながら2〜3時間」「そのままうたた寝」といった使い方が続くと、立ち上がる瞬間の腰の痛みを生みやすくなります。
在宅勤務・デスクワークの「座りっぱなし+寒さ」
冬の在宅勤務では、
- 仕事に集中して気づいたら2〜3時間まったく立ち上がっていない
- 足元が冷えるので、つい丸くなって前のめりの姿勢になる
- ノートPCを低い位置に置き、首も腰も前に突き出した姿勢が続く
といったパターンがよく見られます。
近年の研究でも、長時間の静的な座位や不良姿勢は、腰痛など筋骨格系疾患の主要なリスクのひとつとされています。MDPI+1
「在宅だからこそ、こまめに立ち上がりやすいはずなのに、気づいたら会社にいるとき以上に座りっぱなし」
という方も多い印象です。
冬は「運動不足+体重増加」も静かに効いてくる
寒い時期はどうしても、
- 外に出るのが面倒になり、歩く量が減る
- つい甘いもの・こってりしたものが増える
- お風呂もシャワーですませがち
といった生活になりやすく、筋力の低下や体重増加がじわじわと進みます。
腰痛の長期化リスクを検討した日本の研究でも、運動不足や体重などの生活習慣要因が、腰痛の持続に関係する可能性が示されています。paincenter.gloomy.jp
「気づいたら、去年の冬より腰が弱くなった気がする…」という感覚は、案外このあたりの影響も大きいのです。
Q1. 冬になると朝起きるときだけ腰が痛いのですが、受診した方がいいですか?
A.
起きあがって数分〜数十分でラクになり、日中の動きには大きな支障がないのであれば、
まずは
- 寝る前と朝の軽いストレッチ
- 布団から起きあがるときに、いきなり起き上がらず横向き→肘で支える→手で押して起きる
といった工夫で様子を見ることは多いです。
ただし、以下のような場合は整形外科などへの受診をおすすめします。
- 痛みが2週間以上続き、徐々に強くなっている
- 足のしびれ・力の入りにくさを伴う
- 夜間も痛みで目が覚める
- 発熱や体重減少など、全身症状を伴う
こうしたものは、腰痛の受診の目安としてガイドラインでも「注意すべきサイン」とされています。整形外科学ジャーナル+1
Q2. デスクワーク中、腰が不安なのでコルセットをずっと着けていても大丈夫でしょうか?
A.
コルセットやサポーターは、急性期の強い痛みを一時的に和らげる“支え”としては役に立つことがあります。
しかし、長期間つけっぱなしにすると、
- 体幹のインナーマッスルがサボりやすくなる
- 「コルセットがないと不安」という心理的依存につながりやすい
といったデメリットもあります。
目安としては、
- 痛みが強い数日〜1週間ほどは、外出時や仕事時のみ使用
- 痛みが落ち着いてきたら、「つけない時間」を少しずつ増やしていく
といった使い方がおすすめです。
不安が強い場合は、整形外科や整体院で、あなたの腰の状態にあった使い方を一度相談してみると安心です。
Q3. 自分でストレッチをしても、冬の腰痛が悪化することはありますか?
A.
やり方次第ではありますが、“気持ちよい〜ややツラい手前”までの範囲で行うストレッチは、むしろ血行改善や筋肉のリラックスに役立ちます。
ただし、次のような場合は注意が必要です。
- 前屈みになると、腰から足先まで電気が走るような痛みが出る
- 片足に体重をかけると、脚の力が抜ける感じがする
- ストレッチ後に痛みが明らかに増し、その状態が翌日以降も続く
こうした場合は、ストレッチで神経や椎間板に負担がかかっている可能性もあるため、無理に続けるのは避けて、整形外科などでの評価をおすすめします。
5. おわりに ― 今日からできる“冬の腰の守り方”
ここまで、「冬の腰痛」「座りっぱなしの腰痛」について、
- 冷えと血行不良で筋肉・筋膜がこわばりやすくなること
- 骨盤後傾・猫背の座り姿勢で、椎間板や関節に負担がかかりやすいこと
- 運動不足やストレス、自律神経の乱れが、痛みの長期化に関わること
をお話ししてきました。
最後に、今日から取り入れやすい行動のヒントをいくつかまとめてみます。
| 行動のヒント | イメージ |
|---|---|
| 30〜60分に1回は立ち上がり、一度「伸び」をする | 座りっぱなしで固まった腰椎・骨盤を、軽くリセットする |
| イスに深く座り、お尻の下で「骨盤を立てる」感覚を意識 | 腰だけに負担をかけず、股関節・体幹の筋肉全体で体重を支える |
| 寝る前&朝に、仰向けで膝を抱える・左右に膝倒しを30秒 | 腰と股関節まわりの筋肉・筋膜に「動いていいよ」と合図を送る |
| お風呂は可能な範囲で湯船につかり、腰〜お尻をしっかり温める | 冷えと血行不良を軽くし、筋肉や神経の過敏さを落ち着かせる |
全部を完璧にやる必要はありません。
この中から「これならできそうだな」というものを1つだけ選んで、まずは一週間ほど試してみてください。
それでも、
- 痛みが強くなる
- しびれや足の力の入りにくさが出てくる
- 不安が消えず、日常生活に支障が出ている
という場合は、「我慢しすぎずに専門家に相談する」ことも、立派なセルフケアの一部です。
整形外科での検査・診察が必要なケースもあれば、
筋肉・関節・筋膜・神経・感覚のバランスを整えるアプローチが役立つケースもあります。
私が担当している整体院「整体りびるど」でも、冬の腰痛や座りっぱなしの腰痛に悩む方と一緒に、
姿勢や座り方のクセ、からだの使い方を見直しながら、**「こわごわ動く腰」から「安心して動ける腰」**へのお手伝いをしています。
冬の腰痛は、からだからの小さなサインです。
「もう年だから」とあきらめすぎず、できる範囲で生活を少し整えてあげるだけでも、からだはちゃんと応えてくれます。
無理のないペースで、あなたの腰が少しでも軽くなる冬になりますように。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。







