なぜ子どもの風邪は「お父さんばかり」にうつるの?その理由と対策
目次
Q. 子どもが風邪をひくと、お母さんは平気なのにお父さんだけよくうつるのはなぜ?
どこの家でも起きている「パパだけダウン問題」
「またパパだけ風邪ひいてるじゃん…」
「子どもと同じタイミングで必ず倒れるよね…」
冬場になると、こんな光景はどこの家庭でも“あるある”です。
- 子ども → 風邪をひく
- 数日後 → お父さんが発熱・咳・鼻水でダウン
- その横で → お母さんは多少だるそうでも、なぜか普通に家事・育児をこなしている
この差って、一体どこから生まれるのでしょうか?
この記事では
**「子どもの風邪がなぜかお父さんにうつりやすい理由」**を、
医学的なエビデンスも交えながら、やさしく深掘りしていきます。
「またパパがサボってる」ではなく、
**“構造としてそうなりやすい理由がある”**ことが分かると、
家族みんなの見え方が少しだけ優しくなりますよ。
1. そもそも「風邪をもらいやすい体質」って本当にあるの?
まず押さえておきたいのは、
同じウイルスにさらされても、
風邪をひく人と、ほとんど症状が出ない人がいる
という事実です。
風邪をひくかどうかは、
- どれくらいウイルスにさらされたか(量・タイミング)
- そのときの免疫の状態(疲れ・ストレス・睡眠など)
- 個人差(年齢・性別・体質)
このあたりの“掛け算”で決まります。
1-1. 性別による免疫の違いという背景
医学的には、男性と女性で免疫の反応に差があることが、かなりはっきり分かってきています。
- 女性:
- エストロゲンなどの女性ホルモンが、
一部で免疫を強くする方向に働きやすい - ワクチンへの反応も強く出る傾向がある
- エストロゲンなどの女性ホルモンが、
- 男性:
- テストステロンなどの男性ホルモンには、
免疫をやや抑える側面があるとされている
- テストステロンなどの男性ホルモンには、
近年のレビュー論文でも、
「男性の方がウイルス感染症にかかりやすく、回復にも時間がかかりやすい」
という傾向が報告されています。MDPI+1
もちろん個人差はありますが、
“男性は感染症にちょっと弱め、女性はタフめ”というベースの傾向は、ある程度エビデンスとして確認されているんですね。
1-2. 「体が強い / 弱い」の話ではない
ここで大事なのは、
これは「根性がない」とか「気合いが足りない」とか、
そういう話ではまったくない
ということ。
ホルモンの影響や遺伝的な要素など、
“本人の努力ではどうにもならない部分”もかなり含まれています。
だからこそ、
- パパ → 風邪をもらいやすくて寝込む
- ママ → 軽症で済んで動けてしまう
という構図は、
決して「パパが弱いから」だけで片づけられないんです。
2. 「仕事+育児」で、パパの免疫力はどうしても削られがち
同じウイルスをもらっても、
そのときの睡眠・ストレス・疲労によって、
「発症しやすさ」は大きく変わります。
2-1. 睡眠不足は、風邪をひきやすくする
有名な研究で、
- 2週間の睡眠時間を記録
- そのあと、意図的に風邪ウイルスを鼻に入れて経過観察
- 誰がどれくらい風邪を発症するかを見る
という“ちょっと怖い実験”があります。
その結果、
- 睡眠時間が7時間未満の人は、8時間以上眠る人に比べて、
風邪を発症するリスクが約3倍以上高かった
という報告がされています。PMC+1
つまり、
**「寝不足の人ほど、同じウイルスをもらっても風邪になりやすい」**のです。
仕事・残業・通勤・家の用事…
平日はほぼノンストップで動いているお父さんは、
- 睡眠時間が短い
- 寝る時間がバラバラ
- 寝る直前までスマホやPC
といった生活になりやすく、
どうしても風邪を発症しやすい土台ができてしまいがちです。
2-2. ストレスも風邪のリスクになる
ストレスと風邪の関係も、はっきりデータが出ています。
ストレスの量を評価したうえで風邪ウイルスを暴露した研究では、
- ストレスが強い人ほど、
風邪を発症するリスクが段階的に高くなる
という結果が出ています(ストレス量が多い人ほど、風邪の発症率が有意に高い)。ニューイングランドジャーナルオブメディスン+1
- 仕事でのプレッシャー
- 人間関係
- 経済的な不安
こういったストレスを抱えた状態で、
- 子どもの看病
- 夜間の対応
- 休日も全力で遊ぶ
となると、
パパ側の免疫はかなり消耗した状態になりやすい、というわけです。
3. 「ウイルスを浴びるパターン」が実は違う
もうひとつ大事なのが、
ウイルスにさらされる“パターン”の違いです。
3-1. ママは「薄く長く」、パパは「短時間にがっつり」
- お母さん:
- 日中ずっと子どもと一緒
- こまめな手洗い・片付け・洗濯・掃除
- 鼻水や咳への対処が習慣化している(サッと拭く・すぐティッシュ捨てる etc…)
- お父さん:
- 日中は仕事で不在
- 夜に帰ってきたタイミングで
「パパおかえりー!」の全力抱きつき+至近距離くしゃみ&咳攻撃を一気に受ける - そのままお風呂・食事・寝かしつけ…と、短時間で密着度MAX
つまり、
ママ=薄いウイルス曝露が長時間
パパ=短時間で高濃度に浴びがち
という構図になっていることが多いんです。
同じウイルスでも、
短時間にどっと大量に浴びるほど発症しやすいと考えられており、
この違いも「パパだけがっつり風邪をひく」一因になりえます。PMC+1
3-2. 手洗い・うがい習慣の差
- ママは
- 子どもの鼻を拭くたびに手を洗う
- 調理前後で何度も手洗い
- ティッシュの扱いに慣れていて、汚染された手で顔を触りにくい
- パパは
- 帰宅直後、手洗い・うがい前に子どもを抱きしめがち
- 顔を触ったり、目をこすったりするクセがある
こうした小さな習慣の差が、
トータルでみると感染リスクにかなり効いてきます。
4. 実は「ママも軽くうつっている」けれど、自覚されていないことも多い
ここも誤解が多いポイントです。
「ママは全然風邪ひかない」
ように見えているだけ、というパターン
も、実はかなり多いです。
4-1. 症状が「軽く済んでいる」だけかもしれない
- ちょっと喉がイガイガする
- なんとなくだるい
- 鼻水が少しだけ増えた
くらいで済んでいる場合、
本人が「これは風邪だ」と認識しないまま、
そのまま家事・育児を回してしまうことが少なくありません。
- 女性の方が免疫反応が強く、ウイルスを早く排除しやすい
- 子どもの風邪に日常的にさらされていて、ある程度“慣れ”ができている
そんな背景もあり、
「ガッツリ寝込むほどではないけど、実はちゃんとうつっていた」
というパターンは十分考えられます。
4-2. 「動かなきゃいけないから、動いている」だけ
もうひとつ大きいのは、
ママ側は体調が悪くても、
“止まれないから”動いている
という現実。
- 少々の発熱やダルさは、
「よくあること」としてやり過ごしている - 病院に行かず、自宅で自然に治してしまう
そのため、家族から見ると
「ママは全然風邪ひかない」
「ママだけは倒れない」
ように見えるわけですが、
実際には軽症で済んでいたり、無理して動いているだけということも。
ここを理解しておくと、
- パパ → 罪悪感を抱きすぎないで済む
- ママ → 「自分は大丈夫」と過信しすぎないで済む
という、ちょうどよいバランスが取りやすくなります。
5. 家族でできる「パパも守る」風邪・インフル対策
最後に、現実的にできる対策を整理しておきます。
「パパだけすぐ風邪ひいてしまう問題」は、
少しの工夫でだいぶ変えられます。
5-1. パパ側でできること
① 帰宅直後のルーティンを決める
- 玄関 → 手洗い&うがい
- できれば顔もサッと洗う(目・鼻・口の周り)
- そのあとで、全力抱っこタイム
たったこれだけでも、
ウイルスをもらうリスクはかなり下げられます。
② 睡眠時間を「あと30分」だけ増やす
- いきなり8時間睡眠は難しくても、
+30分長く眠ることを目標にする - 寝る直前のスマホ時間を少しだけ短くする
前述のとおり、睡眠不足は風邪にかかりやすくなる大きな要因です。
「もう一本動画を観る」よりも、30分早く布団に入るほうが、家族サービスになると考えてみてください。
③ 体調が崩れかけたサインを無視しない
- 喉がイガイガする
- やけに疲れが抜けない
- 微妙な悪寒がする
こういう**“前ぶれ”の段階で、少しペースを落とす**だけでも、
本格的なダウンを防げることがあります。
5-2. ママ側・家族側でできること
① 「またパパだけ風邪?」ではなく、構造を知っておく
この記事で見てきたように、
「パパだけ風邪をもらう」背景には
- 性別による免疫の違い
- 仕事による睡眠不足・ストレス
- 接し方・生活パターンの違い
など、いくつもの要素が絡み合っています。
決して、
- 気合いが足りない
- 気をつけていない
- サボりたいだけ
ではありません。
**“そうなりやすい構造がある”**と知っているだけで、
かける言葉はきっと少し優しいものに変わります。
② パパの「睡眠」と「休む権利」を、できる範囲で尊重する
- 土日のどこかで、パパの「90分だけガチ昼寝タイム」をつくる
- 体調が崩れかけたときは、家事・育児の分担を一時的に見直す
もちろん現実には、
ママ側も「それどころじゃない」日々かもしれません。
それでも、
「家族みんなで、パパも子どもも守る」
という意識を少しだけ共有できると、
家の空気がふっと柔らかくなります。
さいごに:パパが風邪をひくのは「弱い」からじゃない
ここまで見てきたように、
- 男性と女性の免疫の違い
- 睡眠不足やストレス
- 接し方や生活パターン
- 症状の“出かた”の違い
こういった要素が重なって、
「子どもの風邪は、なぜかお父さんにうつりやすい」
という、よくある家庭の風景が生まれてきます。
だから、
- パパ自身は
→ 「また迷惑かけた…」と過剰に責めすぎないこと - ママや周りの家族は
→ 「いつも全力で関わってくれているからこそ、もらいやすいんだな」と、
少しだけ労いの視点を持ってあげること
それだけでも、
風邪シーズンのしんどさは、きっと少し軽くなります。
よくある質問(FAQ)
Q. 「免疫を上げるサプリ」を飲めば、パパも風邪をひかなくなりますか?
A. サプリだけで劇的に変わる、というエビデンスは乏しいです。
それよりも、
- 睡眠
- バランスの良い食事
- 適度な運動
- ストレスケア
といった“基本4本柱”を整える方が、科学的にはずっと効果的とされています。OUP Academic+1
Q. 子どもとスキンシップを減らした方がいいですか?
A. それはもったいないです。
スキンシップは子どもの安心感にも、親子の関係にも大切。
「帰宅後すぐの手洗い・うがい」「顔を触る前に手を洗う」など、
“守る工夫”を挟みながら、スキンシップはぜひ続けてあげてください。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
お身体のお悩み等ありましたら、お気軽に整体りびるどにご相談ください。







