ぎっくり膝とは?寒さと冷えで起こる急な膝の痛み
Q. 寒い日に突然膝が痛む…これって“ぎっくり膝”なんですか?
目次
A.
結論からいうと、寒さ・冷えによる関節周りのこわばりと、自律神経の緊張が重なったときに起きやすい“急性の膝の固まり現象”と考えて大丈夫です。
多くは大きなケガではなく、「関節の滑りが悪くなる」「筋肉が瞬間的に縮こまる」といった状態が背景にあります。
適切に整えていけば、多くの方は元の動きに戻っていきます。
この記事で、原因と整え方を詳しく解説します。
現象の整理と、よくある誤解
寒い季節になると、「急に膝が痛んで曲げ伸ばしができない」「立ち上がり動作で膝が抜けそうになる」という相談が増えます。いわゆる“ぎっくり膝”は、腰で起こるぎっくり腰の膝バージョンのようなイメージですが、実際には 「膝の関節周囲が一時的に固まる現象」 と理解するとわかりやすいです。
世間では、次のような誤解がよく見られます。
- 筋力不足が原因だと思い込む
- 加齢で膝が弱っているから仕方ない、と諦めてしまう
- 軟骨のすり減り=痛みのすべて、と解釈してしまう
- 膝だけの問題だと思い込む(実際は股関節・足首も影響)
もちろん筋力や軟骨もゼロではありませんが、 「寒い日にだけ急に痛む」 という特徴は、構造よりも“温度・血流・自律神経”の影響が大きい と考えられています。
● エビデンス
- Journal of Pain Research(2017) では、「気温の低下は関節周囲の血流量を下げ、筋・腱・靭帯の粘性を高めるため、痛みやこわばりが増えやすい」と報告されています。
- さらに Clinical Rheumatology(2019) では、気温低下と関節痛の関連が示され、自律神経のバランスが痛みの“出やすさ”に影響することが指摘されています。
つまり“ぎっくり膝”は、筋力が弱いから突然壊れるわけではなく、
「低温環境×こわばり×自律神経の緊張」が重なることで発生しやすい現象 なのです。
原因の深堀り(構造 × 神経 × 感覚)
① 構造(関節・筋肉・ファシア)
膝は 大腿骨・脛骨・膝蓋骨 という3つの骨が複雑に連動して動く関節です。
これらがスムーズに動くためには、「滑り」「転がり」「回旋」の3つの動きが必要です。
寒さによって以下のような変化が起こります。
- 関節包・靭帯が固くなる(粘性の上昇)
- 筋肉(特に内側広筋・ハムストリング)が縮こまりやすい
- 膝蓋骨の滑りが悪くなる
- 筋膜ラインのテンションが乱れやすい
これらが重なると、日常動作の中で膝が“一瞬引っかかる”ような状態が生まれ、
その瞬間に脳が「危険!」と判断して痛みが強く出ます。
● エビデンス補足
- 冷えによる筋の粘弾性増加は American Journal of Sports Medicine でも報告されており、低温環境で筋の伸張性が低下し、傷めやすくなることが示されています。
膝自体が壊れているというより、
「滑りが悪い状態での急な負荷」 が痛みの引き金になります。
② 自律神経・呼吸・脳の防御反応
寒さは身体にとって“小さなストレス”です。
人は寒さを感じると交感神経(緊張モード)が高まり、
- 筋肉が無意識に固まる
- 血管が収縮して血流が減る
- 呼吸が浅くなる
- 深部体温の調整が優先される
といった変化が起こります。
ここで重要なのが、脳の「危険予測システム」。
痛みの科学では、Threat Neuro Matrix(脳の脅威評価システム) と呼ばれ、脳は
“この膝は危ないかも。守らないと”
と判断すると、実際の損傷がなくても痛みを強めたり、動きを止めることが知られています。
つまり“ぎっくり膝”は、
構造の引っかかり × 自律神経の緊張 × 脳の防御反応
の三重奏のような状態です。
温めたり、深呼吸をすると動けるようになるのは、
防御反応が解けていくからです。
③ 意識・心理・安心感の影響
「また痛くなるのでは」という予測は、脳の防御反応をさらに強めてしまいます。特に40〜70代では、過去のケガ経験や健康不安が痛みの“感じやすさ”を高めることがあります。
逆に、
- 何が起きているかわかる
- どう対処すれば良いかがわかる
- 自分の身体への理解が深まる
こうした「安心情報」が入ると、筋の緊張や痛みの強さが自然と和らぐことも多いものです。
安心は、身体にとって立派な治療刺激になります。
「整える=感覚と構造をもう一度一致させること」でもあるのです。
臨床で見えてきたこと(理学療法士としての視点)
整形外科やリハビリの現場で数多く膝を見てきましたが、“ぎっくり膝”の方には共通点があります。
● よくあるパターン
- 足首が固い(背屈が出にくい)
- 膝のお皿(膝蓋骨)の滑りが悪い
- 太もも前側に力が入りっぱなし
- 片足立ちが不安定
- 寒い季節に痛みが出やすい
痛みのある膝だけを揉む、伸ばす、といった対処よりも、
「膝が動きやすい環境を整える」 ことが圧倒的に重要です。
● 整体りびるどの施術の特徴(構造×感覚×神経)
- 構造:関節の滑り・転がりを整え、太ももとふくらはぎの協調性を回復させる
- 感覚:足裏・皮膚・深部感覚を刺激し、身体地図(ボディマップ)のズレを調整
- 神経:呼吸や自律神経の働きを整え、過剰な防御反応を解除していく
これらが丁寧につながると、膝が「正しい位置に帰る」ように動き出し、力みなくスッと立てるようになります。
過度に誇張することはありませんが、構造・感覚・神経がそろうと、膝は驚くほど軽くなります。
日常でできる小さな実践(セルフケア)
安全にできる、寒い季節の“ぎっくり膝予防”セルフケアを紹介します。
① 膝周りの「温感スイッチ」を入れる(目的:深部体温UP)
- やり方:膝のお皿の周囲を手のひらで円を描くように20〜30秒。
- 注意点:痛みが強い日は、さするだけでOK。押し込む必要はありません。
② 足首ゆらし(目的:膝の滑りを良くする)
- やり方:椅子に座り、つま先を上下にゆっくり20回。
- ポイント:足首の滑りが良くなると、膝の負担が軽くなる。
③ 太もも前後の“同時ゆるめ”(目的:協調性の回復)
- やり方:立ったまま軽く膝を曲げ伸ばし×10回。
- 効果:前後の筋が一緒に働くと膝の安定性が上がる。
- 痛む日は:座って行うだけでもOK。
④ 深呼吸+体幹を膨らませる(目的:自律神経の安定)
- やり方:吸うときにお腹・脇腹・背中が“風船のように”ふくらむ感覚を意識。
- ポイント:2〜3回だけでも十分。体が温まりやすくなる。
⑤ 正しい立ち方の再確認(目的:膝の負担軽減)
- やり方:足裏3点(母趾球・小趾球・かかと)を感じ、軽く重心を前へ。
- 効果:膝で支える負担が減り、“抜ける感じ”が出にくくなる。
まとめ|「寒さ・冷えとぎっくり膝」と、整える・感じるという視点
この記事では、寒さと冷えによって起きやすい“ぎっくり膝”の仕組みをまとめました。
● 今日のポイント
- ぎっくり膝は 「構造の引っかかり×自律神経の緊張×脳の防御反応」 で起きやすい
- 寒さ・冷えは関節や筋を固め、痛みを感じやすい状態をつくる
- 膝そのものより 膝が動きやすい環境づくり が重要
- 安心感と温度管理が、膝の動きや痛みを大きく改善する
“ぎっくり膝”という言葉は少し怖く聞こえますが、多くは整えていけば戻る性質のものです。
身体は本来、戻る力を持っています。
寒さと冷えの季節こそ、感覚を取り戻し、身体の声を聞き直すタイミングです。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
お身体のお悩み等ありましたら、お気軽に整体りびるどにご相談ください。







