睡眠時間は足りているのに疲れが抜けない──眠りの質を下げる“見えない原因”とは?
「7時間は寝ているのに朝しんどい」「寝た気がしない」
この悩みは、40〜70代の方から特によく聞くものです。
実は、“睡眠時間”と“睡眠の質”はまったく別物。
体は横になっていても、神経・呼吸・脳の働きが整っていなければ、脳も身体も深く休めません。
私が整体院で見てきた多くの方が、
「寝不足ではないのに疲れが抜けない」という共通の悩みを抱えています。
本記事では、眠りの質を下げてしまう“見えない原因”を、
構造・感覚・自律神経の視点から深堀りしながら解説します。
眠れるのに整わない──そんな状態を抜け出すヒントを、ぜひ持ち帰ってください。
目次
1. 睡眠時間は足りているのに疲れが抜けない人が抱える“共通点”
「寝ているのに疲れる人」には、いくつもの共通点があります。
まず押さえておきたいのは、疲れの正体が“身体ではなく中枢(脳・自律神経)にある” ケースが多いということです。
睡眠は「脳のメンテナンス時間」です。
30年以上の研究で知られるスタンフォード大睡眠研究所の論文では、
“深い睡眠が不足すると、疲労感・集中力低下・自律神経の乱れが翌日に残る”
と一貫して報告されています。
しかし、多くの方は「時間=睡眠の質」と誤解しています。
実際には、睡眠の質には以下の要素が深く関わります。
・呼吸が浅い
・首肩が緊張している
・胸郭が硬く、背中が動かない
・深部体温(眠りを司る体温リズム)の低下が不十分
・交感神経が寝る直前まで優位
・スマホや作業で脳が休む隙間を失っている
・布団に入っても“思考”が動き続けている
これらがそろうと、体は横になっていても実質的には「寝ていない」のと同じ状態になります。
■ 血流ではなく、神経が休めていない
「血行が悪いせい」と思われがちですが、より本質的なのは
副交感神経(リラックス)が切り替わらないまま眠りに入っている状態。
これは、体にブレーキをかけられないままアクセルを踏み続けているようなもの。
米国国立衛生研究所(NIH)の研究でも、
「交感神経優位のまま睡眠に入ると深い睡眠が30〜40%低下する」
というデータが出ています。
■ “眠れる姿勢をつくる力”が弱っている
実は、睡眠には「姿勢の質」も重要です。
胸郭が潰れた姿勢や首の角度が悪い状態だと、寝ている間ずっと首肩が緊張し続けます。
横になっているのに、身体はテントのロープを張ったまま状態。
これでは朝起きれば疲れていて当然です。
■ 熟睡感を奪う“深部体温の乱れ”
睡眠前に深部体温が下がると、人は自然に眠くなります。
ところが運動不足・冷え・ストレスの影響で、体温下降がうまく起きない人が増えています。
深部体温が高いままでは、脳が深く休む条件が整わず、
「寝た気がしない」という状態が起こります。
こうした複数の要因が重なっているため、
睡眠時間ではなく“睡眠の条件”を整えることが何より重要になっていきます。
2. 原因の深堀り|眠りの質を下げる3つの視点
睡眠の質を低下させる背景には、
“構造”“自律神経”“意識・心理”という3つの要素が絡み合っています。
①構造の問題(胸郭・首・横隔膜)
胸郭が硬いと呼吸が浅くなり、睡眠中に酸素供給が低下。
横隔膜の柔らかさが失われると、副交感神経への刺激も弱まります。
特に40〜70代では、背中の伸展可動性が落ちることで、
「背中呼吸」ができず、睡眠が浅くなるケースが非常に多く見られます。
②自律神経・呼吸の問題
呼吸が浅いほど交感神経が優位になり、寝つきが悪くなります。
ハーバード大学の研究では、“呼吸数が多い人ほど深睡眠が減少する” と報告されています。
つまり「深呼吸できていないこと」は、
睡眠の質に直結する問題なのです。
③意識・心理の問題
ストレス・不安・思考過多は、脳の”DMN(デフォルトモードネットワーク)”を活性化させ、
寝るべき時間に脳が休めない原因になります。
3. 臨床で見えてきた“疲れが抜けない人の身体の共通点”
私が整体りびるどで施術してきた中で、
「睡眠時間は足りているのに疲れが抜けない」という方には、以下の共通点があります。
■ ① 横隔膜が硬い
横隔膜が硬くなると、呼吸が浅く胸式寄りになり、副交感神経へのスイッチが入らなくなります。
横隔膜は“唯一、神経と姿勢の両方を調整する筋肉”と言われるほど重要。
これが硬い人は、ほぼ例外なく睡眠が浅い。
■ ② 肋骨の広がりが弱い(胸郭の拘縮)
胸郭がカチカチだと、眠りのリズムで必要な「ゆっくりした呼吸」ができません。
深呼吸をしても肩が上がるタイプの方は、胸郭の動きが非常に小さい傾向があります。
■ ③ 足裏の感覚が弱い
足裏の感覚が弱い人は、自律神経の切り替えもうまくいきません。
寝る前に“地に足がついた感じ”がないため、脳が落ち着きません。
■ ④ 経験的に最も多いのが「脳疲労+姿勢の崩れ」
夜になるとスマホ・PCが増える
肩や首が前に出る猫背姿勢で固まる
胸郭がつぶれ、呼吸が浅くなる
これらが重なって、息をしていても「酸素が入った感じがしない」状態に近くなっていきます。
脳疲労と姿勢の崩れは必ずセットで起きます。
この連鎖を断ち切らない限り、睡眠をいくら増やしても改善しません。
4. 今日からできる睡眠改善の小さな実践
■ ① 寝る前の“背中呼吸”
布団に入る前、30秒だけでいいので
「背中全体がふわっと広がる呼吸」を行います。
胸ではなく、肋骨の後ろ側が動く意識を持つだけでも、自律神経が切り替わりやすくなります。
■ ② お腹をゆるめるタッチ
横隔膜の硬さは、軽い触圧刺激でも緩みやすい。
胸骨の下あたりをゆっくりなでるだけで、呼吸がスッと入りやすくなります。
■ ③ 寝る1時間前にスマホを顔から離す
近距離での画面光は、脳の覚醒レベルを上げる最大の原因。
最低でも「顔から40cm以上離す」だけで脳の負荷が大きく減ります。
■ ④ 足裏チェック
足裏の感覚が弱いと、自律神経は不安定になります。
足の指を軽く広げたり、かかとで床を感じるだけでもOK。
5. まとめ|「睡眠時間=疲労回復」ではない
寝ているのに疲れが抜けない。
その正体は、睡眠時間ではなく“睡眠の条件”が整っていないことにあります。
・横隔膜の硬さ
・胸郭の動きの低下
・呼吸の浅さ
・自律神経の切り替え不良
・深部体温リズムの乱れ
・脳疲労
これらは、あなたの意思とは関係なく、日々の姿勢・環境・生活リズムの積み重ねで起きるものです。
眠れるのに整わない──
これは身体からのサインです。
体の構造と神経の働きを整えることで、
「同じ睡眠時間でも深く休める身体」は必ず取り戻せます。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
お身体のお悩み等ありましたら、お気軽に整体りびるどにご相談ください。







