肩こり・だるさ・朝の倦怠感…それ、実は“脳疲労”かもしれません
11月から年末にかけて、「肩がこる」「朝からだるい」「集中できない」といった相談が一気に増えます。気温差や多忙な時期だから…と片付けられがちですが、その裏側で静かに進んでいるのが “脳疲労” です。
脳疲労とは、脳が処理すべき情報量の多さに追いつかず、休むタイミングを失っている状態のこと。じつは肩こりや倦怠感、気力の低下は筋肉より“脳の働き”に左右されることが多いのです。
この記事では、脳疲労が身体にどんな影響を与えるのか、自律神経や呼吸とのつながり、そして日常でできるケアまで、理学療法士としての経験とエビデンスを踏まえ丁寧に解説します。
目次
肩こり・倦怠感が続く理由──実は“脳が処理しきれていない”から
多くの人が「肩がこるのは筋肉の問題」「だるいのは体力の問題」と考えています。ですが臨床では、筋肉よりも脳(中枢神経)側の問題が先に起きているケースが非常に多い。
脳疲労は、医学的には「脳の前頭前野や帯状皮質の活動低下」と結びついており、研究では スマホ時間の増加・気温差ストレス・睡眠の分断が脳疲労を招く ことが繰り返し示されています(Nouchi et al., 2019 / Lim et al., 2010)。
脳には“処理能力の上限”があります。
そこを超えると、次のような現象が起きます。
- 呼吸が浅くなる
- 姿勢が固まる
- 筋肉が“守りの緊張”を起こす
- 自律神経が交感神経優位で張りつく
- 疲れが抜けず朝からだるい
つまり、肩こりや倦怠感は「脳の過労サイン」。
特に冬は、
- 気温差
- 睡眠リズムの乱れ
- 仕事量の増加
- ホリデー期のストレス
- 自律神経の調整低下
これらが一気に押し寄せ、脳疲労が目立つ時期でもあります。
「肩こり」や「だるさ」は、単なる身体の問題ではなく、
脳が“休めていない”というメッセージなのです。
原因の深堀り(構造・神経・心理)
①構造:脳疲労は“姿勢のクセ”を強制し、肩こりを悪化させる
脳が疲れると、身体は「守りの姿勢」へ移行します。胸を閉じて、肩をすくめ、肋骨が固まり、横隔膜が硬くなる——この一連の反応は、体幹の動きを制限し、肩や首の筋肉を過剰に働かせます。
研究でも「心理的負荷が姿勢の前傾・胸郭の硬さを生み出す」ことが示されています(Meier et al., 2020)。
つまり、脳疲労は“姿勢を変える力”を持つのです。
②自律神経:脳疲労はアクセル神経(交感神経)を踏みっぱなしにする
脳が疲れている状態では、副交感神経(ブレーキ)が働きにくくなります。
深呼吸してもリラックスできないのは、この“切り替えスイッチの不良”が原因。
特に冬は寒さ刺激が交感神経を強めるため、肩こり・倦怠感が増えやすくなります。
複数の研究でも「精神的ストレスと寒冷刺激の併用は交感神経反応を増強する」と報告されています(Kuraoka et al., 2015)。
③意識・心理:“とにかく頭が忙しい人”ほど体が休めない
脳疲労は心理状態とも密接です。
- 予定が多い
- スマホで常に処理し続けている
- 眠る直前まで情報をインプットしている
こうした生活は、脳が「休んでよい」と判断できない状態をつくります。
脳が安全を感じない限り、筋肉は緩まず、自律神経は落ち着きません。
臨床で見えてきたこと──脳疲労の人にしか出ない“体のクセ”がある
臨床で脳疲労と思われる方をみると、次の特徴がほぼ共通して現れます。
●呼吸が浅く、胸だけが上下する
横隔膜が働かず、胸式呼吸に偏る。
これでは副交感神経が動かないため、どれだけ深呼吸しても落ち着かない。
●姿勢が固まっている(胸椎・肋骨が動かない)
脳疲労の方は、多くが“胸椎のかたさ”を持っています。
胸郭は呼吸にも自律神経にも直結するため、ここが固まると身体が休めません。
●触れると背中が冷たい
脳疲労は末梢循環の低下を引き起こすため、背中・腰が冷たく感じられることが多い。
これも冬に肩こり・倦怠感が増える理由のひとつ。
●施術後に「頭が軽い」「視界が明るい」と言われやすい
これは筋肉だけでなく、体幹・呼吸・感覚入力が整い、脳の“安全回路”が戻るから。
実際に研究でも「体性感覚刺激(触覚・圧感覚)は前頭前野の負荷を軽減する」と報告されています(Takeuchi et al., 2013)。
つまり、脳疲労は“感覚の質”を改善することで、大きく変わる可能性を持っています。
日常でできる小さな実践──脳疲労をやわらげる3つのコツ
脳疲労そのものは“脳を休ませる感覚”を身体に取り戻すことで軽くなります。
■① 背中とみぞおちを温める(最強の即効性)
自律神経の要となる横隔膜周りを温めると、副交感神経が働きやすくなる。
特に冬は、背中(胸椎6〜10番あたり)が固まりやすい。
■② 吐く息を長くする(呼吸で脳にブレーキを)
研究でも「長い呼気は副交感神経の活動を高める」と明確に示されています(Jerath et al., 2015)。
1:3(吸う:吐く)くらいの比率を意識してゆっくり吐くだけで脳の緊張がほどける。
■③ 足裏の“接地感覚”を取り戻す
脳が疲れると、身体のセンサー(固有感覚)が鈍くなり、姿勢制御が乱れます。
足裏を感じるだけで、脳は「いま、地面に立っている」と確信し、それが安全感につながり筋緊張が下がる。
立ち上がる前に「足指を軽く動かす」だけでも効果大。
まとめ|肩こりや倦怠感は“脳の過労”から始まる
肩こり・だるさ・朝の倦怠感。
これらは筋肉の問題に見えて、実は“脳疲労”という中枢の疲れが根本にあることが多い。
- 冬の気温差
- 仕事や家事の負荷
- 情報量の多さ
- 睡眠リズムの乱れ
- 呼吸の浅さ
- 姿勢の硬さ
これらが積み重なることで、脳は常に“処理し続ける状態”になり、自律神経のアクセルが踏みっぱなしになります。
放置すると慢性化しやすいですが、
呼吸・姿勢・体幹・感覚を整えるだけで脳疲労は大きく軽減できます。
「なんとなくスッキリしない」「疲れが抜けない」と感じたときは、
筋肉ではなく“脳の疲れ”にも目を向けてみてくださいね。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
お身体のお悩み等ありましたら、お気軽に整体りびるどにご相談ください。







