「冷え」は血流だけの問題じゃない──“神経のトーン”が乱れると体は冷える
目次
「冷え=血行不良」とは限らない
寒くなると、「手足が冷たい」「肩がこる」「夜になると体が冷えて眠れない」などの声をよく耳にします。
多くの人が「血流が悪いから」「代謝が落ちたから」と考えますが、実際にはそれだけではありません。
冷えの根本には、神経の働き=“自律神経のトーン(緊張度)”の乱れが深く関わっています。
体温を一定に保つために、私たちの神経は常に働き続けていますが、生活のストレスや姿勢の乱れ、呼吸の浅さによってこのバランスが崩れると、
本来温かくあるべき体が“守りの冷え”に入ってしまうのです。
この記事では、「冷え」と「神経」の関係を構造・感覚・神経の3つの視点から深堀りしながら、
どうすれば内側から温まる体を取り戻せるのかを解説していきます。
冷えは“守りの反応”。体が自ら緊張しているサイン
まず知ってほしいのは、**冷えは体の異常ではなく「防御反応」**だということ。
外気が冷たくなれば、体は熱を逃がさないように自動的に血管を収縮させ、筋肉を少し緊張させます。
このとき働くのが「交感神経」。
体を“戦う・守るモード”に切り替えるスイッチのようなもので、血流を中心にエネルギーを内側に集めようとします。
問題は、この交感神経がずっとONのままになってしまうことです。
長時間の緊張状態が続くと、末端(手足・皮膚)の血流が制限され、結果として冷えが慢性化します。
つまり、「冷え」は単に温度の問題ではなく、
神経の緊張=トーンが高すぎる状態から抜け出せないことによって起こる現象なのです。
冷えを3つの視点で深堀りしてみる
① 構造の視点:姿勢の崩れと“神経の圧迫”
姿勢が崩れると、神経が走るルートに小さな“ねじれ”や“圧迫”が生じます。
特に、胸郭(肋骨まわり)や首の付け根が硬くなると、交感神経幹が圧迫されやすくなり、全身の自律神経バランスに影響を及ぼします。
たとえば、猫背で肩が前に巻き込むと、胸を広げる動作が制限され、呼吸が浅くなる。
これにより胸部の血流が滞り、温かい血液が末端に届きにくくなるのです。
逆に、胸郭がやわらかく動く姿勢を取り戻すだけで、
体幹の循環・神経伝達が改善し、「全身ぽかぽか感」が自然に生まれます。
② 自律神経・呼吸の視点:“体を温める呼吸”と“冷やす呼吸”
呼吸もまた、神経トーンを左右する大きな要素です。
呼吸が浅く速いと、交感神経が優位になり、体は「緊張=冷える」モードに入ります。
一方で、ゆっくりと深い呼吸を行うと、副交感神経が働き、血管が開きます。
特に、息を吐く時間を長く取ることで、体が「リラックスしていい」と判断し、
筋肉がゆるみ、末端まで温かさが行き届きます。
臨床的にも、膝や足先の冷えを訴える人に呼吸再教育を行うと、
わずか数分で皮膚温が上がるケースがあります。
つまり、呼吸=内側からのヒーターなのです。
③ 意識・心理の視点:“感じない”ことが冷えを助長する
意外かもしれませんが、冷えは“感覚の鈍り”とも密接に関係します。
ストレスや疲労が溜まると、脳は「感じる」作業を後回しにし、
体の感覚入力を遮断してしまう傾向があります。
この状態では、体が冷えていても「冷たい」と感じにくくなり、
気づいた時には深部まで冷えが進んでいることも。
つまり、「冷えを感じる力」が落ちると、
体を守るための神経反応も鈍り、冷えが慢性化しやすくなります。
逆に、皮膚を軽くさする、呼吸を意識する、足裏を感じる――
こうした“小さな気づき”を日常に戻すだけで、
感覚が蘇り、神経が再び正しい反応を取り戻し始めます。
臨床で見えてきた「冷えと神経の関係」
理学療法士として臨床を重ねてきて感じるのは、
冷えを訴える人ほど「体幹が固く」「呼吸が浅い」傾向があるということです。
特に女性やデスクワーカーでは、
・お腹の奥(腸腰筋・横隔膜)が動いていない
・首・鎖骨まわりの緊張が強い
・足の甲や足裏の感覚が鈍い
といった共通点が多く見られます。
これらはいずれも自律神経の通り道=体幹部の動きの制限に関係しています。
つまり、血流だけを見ても改善しにくいのは、
神経の“通り道”そのものが滞っているからなのです。
実際に施術では、呼吸を整え、胸郭や骨盤の動きを引き出すと、
「足が一気に温かくなってきた」と言われることがよくあります。
これは、神経と血管が同時に活性化したサイン。
冷えが“抜ける瞬間”は、感覚が戻る瞬間でもあります。
日常でできる“神経から温まる”整え方
① 朝一番の深呼吸で「副交感神経を起こす」
起き抜けに3回、深く息を吐いてみましょう。
寝ている間に優位だった交感神経をリセットし、穏やかに1日を始められます。
② 胸をひらくストレッチを1日3回
両手を背中で組み、胸を広げてゆっくり深呼吸。
これだけで胸郭が動き、神経・血流の通り道が整います。
③ 皮膚を感じるケアを取り入れる
手足を温めるより、「感じる」時間を作ることが大切。
入浴後に足裏やふくらはぎを軽くさするだけでも、
神経が刺激され、温かさが持続します。
④ 寝る前の“副交感リセット”
寝る直前はスマホやニュースから距離を置き、
「今日もよく頑張った」と体を労う時間を持ちましょう。
心理的なリラックスが、そのまま体温調整の安定につながります。
まとめ|冷えは“神経から整える”時代へ
冷えは、血液や筋肉の問題だけではなく、神経のバランスの乱れによって起こる「体のサイン」です。
神経が過敏になれば守りに入り、鈍くなれば感じにくくなる――。
この繊細なトーンの揺らぎこそが、体温や感覚に影響を与えています。
温めることも大切ですが、
それ以上に「感じて、ゆるめて、整える」ことが、真の冷え対策です。
冷えやすい季節こそ、
体を“温める”のではなく“目覚めさせる”。
そんな意識の変化が、身体の内側から温もりを取り戻す第一歩になります。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
お身体の不調等でお悩みがあれば、松本市岡田の整体りびるどにお気軽にご相談下さい。







