四十肩・五十肩なのか、ただの肩こりなのか~放っておかない方がいいサインの見分け方~
「四十肩かな…」「ただの肩こりだと思って放っておいて大丈夫?」と迷う場面、40〜50代になると一度は出てきやすい悩みです。日常でよくある肩こりと、放置すると生活に支障が出やすい四十肩・五十肩には、いくつかの「サインの違い」があります。この記事では、病院に駆け込むべきケースと、様子を見ながらセルフケアを試していいケースを整理しつつ、読んだあとに少しホッとできるようにまとめていきます。
目次
1. 「四十肩かも…」と不安になるときに多いパターン
四十肩・五十肩の相談で多いのは、こんな場面です。
- ある朝、服を着替えようとして腕を通した瞬間に「ズキッ」と鋭い痛みが走った
- 洗濯物を干そうと腕を上げたら、肩の奥がつっかえてそれ以上いかない
- 夜、寝返りをうつたびに肩が痛くて目が覚めてしまう
最初は「肩こりが酷くなっただけかな」と思って様子を見る方が多いのですが、数週間たっても良くならず、むしろ「動かせる範囲がだんだん狭くなってきた」と感じて受診されることが多い印象です。
一方で、いわゆる「肩こり」は、
- 長時間のデスクワークやスマホのあとにズーンと重くなる
- お風呂に入ると少しラクになる
- 動かしたときの鋭い痛みではなく、だるさ・こわばりが中心
といった特徴が中心で、「腕がここから先に動かない」「服の脱ぎ着そのものができない」といった“動きの制限”までは出ないことが多いです。
日本の調査では、首や肩の痛み・こりを感じている人は全体の4〜5割とされ、特に20〜50代の女性で多いことが分かっています。PubMed+1
それだけ「肩こり」はありふれた症状ですが、その中に四十肩・五十肩が紛れ込んでいることもあります。
この記事では、
- どこまでが「普通の肩こり」なのか
- どんなサインが出てきたら四十肩・五十肩を疑った方がよいのか
を、できるだけ分かりやすく一緒に整理していきます。
2. 四十肩・五十肩と「普通の肩こり」をいったん整理する
まずは言葉の整理からしておきましょう。
四十肩・五十肩とは?
医学的には「凍結肩(フローズンショルダー)」「癒着性関節包炎(アドヒーシブ・カプスリティス)」と呼ばれ、肩関節を包んでいる関節包という袋状の組織が炎症を起こしたり、縮んで固くなった状態を指します。NCBI+1
特徴としては、
- 明らかなケガのきっかけがないことも多い
- 肩を動かすと強い痛みが出る
- 他人が動かしても(他動運動)、ある角度から動かない
- 夜間痛(夜にうずいて目が覚める)が出やすい
といった点が挙げられます。
自然経過として「痛い時期 → とにかく固い時期 → 少しずつ動くようになる時期」と、数か月〜数年かけて変化していくことが分かっています。従来は「放っておいても1〜2年で元に戻る」と言われてきましたが、最近の研究では、何年も後まで動きの制限や違和感が残る人も一定数いることが報告されています。American Academy of Family Physicians+1
「普通の肩こり」とは?
一方、一般的に「肩こり」と呼ばれているものは、筋肉のこわばり・血行不良・姿勢のクセなどが組み合わさった状態の総称です。日本人では、首・肩の痛みやこりを訴える人が約半数にのぼるという報告もあり、まさに“国民病”と言って良いくらい身近な症状です。PubMed+1
肩こりでは、
- 首〜肩周りの筋肉が張ったように重い
- 首・肩を回したりストレッチすると一時的にラクになる
- 動かせる範囲は保たれている(「上がらない」というより「重だるい」)
という形が多く、肩関節そのものの可動域がガツンと制限されるケースは少なめです。
よくある誤解
- 「四十肩は、40歳になったら誰でもなる」
→ 実際には、肩の痛み全てが四十肩ではありません。肩こりや腱板(筋肉と腱)の炎症など、別の原因も多く含まれています。PMC+1 - 「四十肩=いじらずにひたすら我慢するもの」
→ 痛みが強い時期に無理をすると悪化することはありますが、適切な時期に適切な運動やリハビリを行うことで、回復がスムーズになるケースも多いです。
ざっくり言うと、
「肩の筋肉が疲れて張っている」のが肩こり
「肩の関節そのものが固まって動かなくなっている」のが四十肩・五十肩
とイメージしてもらうと分かりやすいかもしれません。
3. からだの中で実際に起きていること
ここでは、からだの中で何が起きているのかを、少しだけ専門的な視点も交えながら見ていきます。
四十肩・五十肩のメカニズム
四十肩・五十肩では、肩関節を包む「関節包」と呼ばれる袋状の組織に炎症が起こり、その後、線維化・癒着によって“きゅっとすぼまる”ように硬くなると考えられています。NCBI+1
その結果、
- 肩の奥の方に、引きつれるような痛み
- 特定の角度で「そこから先はロックがかかったように動かない」
- 無理に動かそうとすると、鋭い痛みが走る
といった状態になります。
自然経過については、大きく3つの時期に分けて説明されることが多いです。American Academy of Family Physicians+1
- 痛い時期(痛み優位期)
- 2〜9か月ほど続くことが多い
- 動かしてもじっとしていても痛い
- 夜間痛が強く、眠りを妨げることも
- 固い時期(拘縮期)
- 痛みは少し落ち着くが、とにかく動かない
- 髪を結ぶ・エプロンの紐を結ぶ・後ろポケットに手を入れる、などが難しくなる
- 少しずつほどけていく時期(回復期)
- 数か月〜数年かけて、徐々に動きが戻ってくる
- ただし、完全に元通りにならない場合もある
ある大規模な研究では、3年間で約1%の人が四十肩・五十肩を発症しており、特に女性と糖尿病のある人で発症率が高いことが報告されています。サイエンスダイレクト+1
また、糖尿病のある方では、四十肩・五十肩の発症リスクが3〜10倍程度高いというレビューもあります。MDPI+1
血糖値が高い状態が続くことで、関節包のコラーゲンが変性し、硬くなりやすいのではないかと考えられています。
「肩こり」で何が起きている?
一方、いわゆる肩こりでは、
- 首〜肩周囲の筋肉(僧帽筋・肩甲挙筋など)が長時間緊張状態にある
- 長く同じ姿勢が続くことで血流が低下し、疲労物質がたまりやすくなる
- ストレスや睡眠不足で、自律神経が緊張側(交感神経優位)に傾き、筋肉がさらにこわばりやすくなる
といったことが組み合わさっています。首・肩の痛みやこりがある人は、健康関連QOL(生活の質)が低くなりやすいという報告もあり、単なる「贅沢病」とは言えない側面があります。Wiley Online Library+1
感覚の違いに目を向けてみる
臨床でお話を聞いていると、
- 四十肩・五十肩の方
→「ここから先は、壁にぶつかったみたいに動かない」「奥の方がひきつれる」 - 肩こり中心の方
→「重だるい」「カチカチに張っている」「首から頭にかけてジンジンする」
というように、「感じ方」の表現が少し変わることが多いです。
からだの構造(関節包か筋肉か)と同じくらい、「自分の感覚の違い」に気づくことも、見分ける手がかりになります。
4. 日常のクセとサインのつながり|セルフケアと受診の目安
ここからは、生活の中で見られやすいパターンと、「四十肩・五十肩かもしれないサイン」を、一度整理してみます。
生活の中で見かけるパターン
- デスクワークやスマホ時間が長く、もともと肩こり持ち
- そこに、重い荷物を持った・転んで手をついた・肩をぶつけた等のきっかけが重なる
- しばらくは「いつもの肩こり」のつもりで我慢していた
- 数週間〜1か月ほどたった頃から、腕を上げたり後ろに回すと強い痛み → 動きの制限が目立ち始める
この流れで四十肩・五十肩を発症する方もいれば、明らかなケガのきっかけなく、じわじわと始まる方もいます。
四十肩・五十肩を疑いたいサイン
次のようなサインが複数当てはまる場合は、四十肩・五十肩の可能性を考えてよい場面です。
- 片側の肩だけが強く痛い
- 腕を横から挙げる・後ろに回す動きで、途中から先にまったく動かない
- 人に動かしてもらっても、それ以上動かない
- 夜間にうずくような痛みで目が覚める
- 服の脱ぎ着・髪を結ぶ・エプロンの紐を結ぶなど、日常動作が明らかに難しくなった
一方、
- 首〜肩にかけて両側とも重だるい
- ストレッチやお風呂でラクになる
- 動かせる範囲は保たれている
という場合は、「筋肉中心の肩こり」の可能性が高くなります。
「必ず病院を優先してほしい」ケース
以下のような場合は、四十肩・五十肩というより別の問題(腱板断裂、神経障害、感染など)の可能性もあるため、まず整形外科などの受診をおすすめします。PMC+1
- はっきりした転倒・ケガ・スポーツ中の受傷のあとに急激な痛みが出た
- 肩だけでなく、腕全体のしびれ・力の入りにくさが強い
- 熱感・発熱・全身のだるさを伴う
- 安静にしていても耐えがたい痛みが続く
「整体りびるど」で大切にしていること
私の施術では、いきなり肩を強く動かすのではなく、
- 首・胸椎・肩甲骨まわりの動き
- 肩を支えている筋肉のバランス
- からだ全体の力み具合や、呼吸の浅さ
などを一つずつ確認しながら、「今の肩がどこまでなら安心して動かせるか」のラインを探していきます。
四十肩・五十肩の方でも、まだ「痛みの時期」なのか、「固さの時期」なのかによってアプローチは変わりますし、セルフケアでやっていいこと・控えた方がいいことも異なります。そのあたりを一緒に整理していくイメージです。
Q1. 四十肩・五十肩は、放っておけば必ず自然に治りますか?
自然に少しずつ良くなってくるケースも確かにあります。ただ、近年の研究では「数年たっても、完全には動きが戻らず、生活の中で片側だけ動きづらさが残る人もいる」と報告されています。American Academy of Family Physicians+1
特に、夜間痛が強く眠れない・服の脱ぎ着がつらい・仕事や家事に大きく支障が出ている場合は、「時間が解決してくれるはず」と我慢しすぎず、一度専門家に相談することをおすすめします。
Q2. 病院と整体、どちらに行けばいいか迷うときの目安は?
- 転倒などのケガがはっきりあるとき
- 急に腕に力が入らなくなったとき
- 発熱や強い炎症症状があるとき
こういった場合は、まず整形外科など医療機関の受診を優先してください。レントゲンや必要に応じてMRIなどで、骨折や腱板断裂などを除外しておくことが大切です。PMC+1
一方で、
- レントゲンでは「特に大きな異常はない」と言われた
- 痛み止めや注射だけでは心配で、からだの使い方も見直したい
- 肩だけでなく、姿勢や首・背中も含めて整えたい
といった場合には、整体やリハビリ専門職のサポートが役に立つこともあります。
Q3. 自分でストレッチしていいのか、逆に悪化させないか心配です
痛みの強さや出ている時期によって答えが変わります。痛みの時期で、ちょっと動かしただけで激痛が走るようなときに「痛みに耐えてぐいぐい伸ばす」のはおすすめできません。炎症を強めてしまうことがあります。
目安としては、
- 「少しつっぱるけれど、深呼吸しながら10〜20秒ならキープできる」くらいの範囲
- 翌日に痛みが強く残らない範囲
での、やさしいストレッチや振り子運動から始めるのが安心です。不安な場合は、病院や整体で実際に動きを確認してもらいながら、「あなたの肩に合ったライン」を一緒に探してもらうと良いと思います。
5. 今日から意識したい小さな一歩と、頼れる先の選び方
最後に、今日から取り入れやすいポイントをいくつか挙げておきます。
1)「痛みの質」と「動きの制限」に目を向けてみる
まずは、自分の肩がどんな状態なのかを、ざっくり整理してみましょう。
| 観察したいポイント | チェックの例 |
|---|---|
| 痛みの質 | 重だるさ中心か、特定の角度での鋭い痛みか |
| 動かせる範囲 | 服の脱ぎ着・髪を結ぶ・後ろポケットに手が届くか |
| 夜間痛 | 夜にうずいて目が覚めるかどうか |
| 経過 | 数日で変化しているか、数週間〜数か月同じ状態か |
「重だるさ中心で、動きは保たれている」なら肩こり寄り、「鋭い痛みと明らかな可動域制限」が目立つなら四十肩・五十肩寄り、といった大まかな方向性が見えてきます。
2)全部を変えなくていいので、「これだけ」は意識してみる
- 長時間同じ姿勢にならないよう、1時間に1回は立ち上がって肩を回す
- 肩だけでなく、胸を開く・背中を反らす動きをこまめに入れる
- 寝る前のスマホ時間を少しだけ減らし、深い呼吸を数回入れてから眠る
どれも、完璧にやろうとしなくて大丈夫です。「これなら続けられそうかな」というものを1つ選んで試してみるくらいが、ちょうどいいと思います。
3)相談のタイミングを「悪化してから」ではなく「気になり始めたとき」に
- 3〜4週間以上、痛みや動きの制限が続いている
- 夜間痛や、日常動作の支障がはっきり出てきた
- 反対側の肩も気になり始めて不安が強い
こんな状態が続くときは、「まだ我慢できるし…」と抱え込まず、一度専門家に相談してみるのもひとつの方法です。
整体りびるどでも、病院での検査結果を踏まえつつ、「今の肩にとって安全な動かし方」や「無理をしないセルフケアの範囲」を一緒に整理していくお手伝いをしています。
つらさが長引くと、からだだけでなく気持ちも塞ぎがちになります。ひとりで抱え込まず、頼れる先をいくつか持っておけると安心です。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
この記事があなたのより良い生活のための一助になりますように。







