「冬になると膝が痛む」──冷えだけじゃない、“関節センサー”の働き低下とは?

松本市の整体りびるど|冬の寒さで膝が痛む原因を神経と感覚の視点から解説する理学療法士テラサワのブログ記事

寒くなると膝が痛む…それ、本当に「冷え」だけのせい?

気温が下がると、「膝が重い」「階段がつらい」「朝が特に痛い」という相談が増えてきます。
多くの人が「冷えて血行が悪くなるから」と考えますが、実際はそれだけでは説明がつきません。

寒い時期には、関節の中の“センサー”の働きが鈍くなることで、筋肉の動き方や力の入り方が変化します。
これが、膝の痛みや違和感の正体のひとつです。

この記事では、冬の寒さが膝関節にどのような影響を与えるのかを、
「構造・神経・感覚」の3つの視点から深掘りしていきます。


「冷えると痛い」は半分正解。けれど、もう半分は“神経の誤作動”

寒さによって血管が収縮し、筋肉や関節が冷えて硬くなる――ここまでは誰もが知るメカニズムです。
しかし、それと同時に、神経の伝達速度も低下していることはあまり知られていません。

温度が1℃下がるだけでも、神経伝導速度はおよそ2m/s低下するという報告があります。
つまり、脳から「動け」という信号が出ても、末梢(特に膝や足先)に届くまでの反応がワンテンポ遅れる。

その結果、筋肉同士の協調が崩れ、関節に“ズレ”が生まれやすくなるのです。


膝が痛む3つの要因を「構造・神経・感覚」から見る

① 構造:筋肉と関節包の“滑り”が悪くなる

冬の冷えは、膝周囲の筋肉(特に大腿四頭筋やハムストリングス)を硬くします。
筋肉が硬くなると、関節の中で本来スムーズに動くはずの滑膜関節包が伸び縮みしにくくなります。

その結果、膝を曲げ伸ばしするたびに小さな摩擦が生じ、
関節の動きを「スムーズ」ではなく「ギシギシ」と感じるようになります。

これはまさに“構造的な滑りの悪化”。
血流というより、「潤滑」と「柔軟性」の問題です。


② 神経:関節センサー(固有受容器)の働き低下

膝関節には、**固有受容器(proprioceptor)**と呼ばれる“位置センサー”が存在します。
このセンサーは「関節が今どの角度にあるか」「どの方向に動いているか」を常に脳へ送っています。

ところが寒さで筋膜や関節包の動きが鈍くなると、このセンサーの入力が弱くなり、
脳が「今どの位置にあるか」を正確に把握できなくなります。

結果、筋肉の働くタイミングがズレ、関節に余計な負担がかかります。
このような**“情報の誤差”による痛み**が、冬に多い膝痛の一因なのです。


③ 感覚・自律神経:冷えによる“守りの反応”

自律神経は寒さを感知すると、「体を守る」ために交感神経を活発にします。
すると血管が収縮し、筋肉がやや緊張状態に。

この「守りの反応」は、言い換えれば“軽い防御姿勢”です。
体を温めようとする自然な働きですが、
慢性的に続くと関節を動かす筋のバランスが崩れ、膝の曲げ伸ばしにも影響します。

つまり、冷えそのものより、“冷えに対する反応”が痛みを引き起こすのです。


臨床で感じる“冬の膝”の特徴

理学療法士として冬場に多く出会うのは、
「関節が腫れているわけでもないのに痛む」「動き出しが特に重い」というケース。

実際に触ってみると、

  • 膝蓋骨(お皿)の動きが硬い
  • 太もも前面の張りが強い
  • 足首の柔軟性が落ちている
    といった共通点があります。

興味深いのは、足首や股関節を整えると膝の痛みが和らぐということ。
膝自体よりも、「連鎖する関節の働き」や「体の支え方」に原因がある場合が多いのです。

つまり、膝の痛みを“膝だけ”で見てしまうと、本質を見逃してしまう。
それが冬の膝痛の難しさでもあります。


日常でできる小さな整え方

① 起きる前の“関節ウォーミング”

布団の中で、膝をゆっくり曲げ伸ばししましょう。
手で太ももや膝を軽くさすって温めるだけでも、神経の伝達が早くなります。

② “膝を冷やさない”より“体幹を冷やさない”

膝だけを温めても、血流の根本改善にはなりません。
お腹や背中(体幹)を温めることで中枢体温が上がり、結果的に末端の循環が改善します。

③ “下半身の筋膜”を伸ばす

太もも裏(ハムストリングス)やふくらはぎを軽くストレッチすると、
膝関節の動きがスムーズになり、関節包への刺激も増えます。

④ 靴下は“締めすぎない”

血流を止めてしまうほどきつい靴下やレッグウォーマーは逆効果。
「ふんわり温かい」が基本です。


まとめ|冬の膝痛は“感覚の鈍り”に気づくチャンス

冬になると膝が痛むのは、単に冷えたからではありません。
関節のセンサーが眠ってしまうことで、脳と体の連携がズレてしまう――それが本質です。

痛みは“壊れているサイン”ではなく、“使い方がずれているサイン”。
だからこそ、

  • 温めるだけでなく感覚を目覚めさせる
  • 膝だけでなく全体のつながりを整える
  • 「守る」体から「動ける」体へ

この3つを意識するだけで、冬の膝の不調はぐっと減ります。

寒い季節こそ、自分の体の“感覚の声”を丁寧に聴いてみましょう。
そこに、整えるためのヒントが必ず隠れています。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
身体の不調等あればお気軽に松本市岡田の整体りびるどにご相談下さい。

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