Q.肩こりの原因って、やっぱり“姿勢の悪さ”なんですか?【深堀りQ&A】
Q.肩こりの原因って、やっぱり“姿勢の悪さ”なんですか?
A.姿勢そのものよりも、「姿勢を保つための感覚」と「支え方のバランス」が崩れているケースがほとんどです。
「肩こりの原因は姿勢の悪さ」──そう聞いたこと、ありますよね。
でも実際には、姿勢が悪いから肩がこるのではなく、“姿勢を支える感覚”が鈍くなっていることで、結果的に肩こりを招いてしまうケースが多いのです。
いわゆる“猫背”や“巻き肩”は、原因ではなく結果。
背中が丸まる、頭が前に出る──こうした形の乱れは、筋肉の弱さよりも「自分の身体をどう支えているか」という感覚のズレから始まります。
🔍姿勢の乱れは、どこから生まれるの?
姿勢というのは、“形”ではなく“機能”の表れです。
人の身体は重力の中で、微細な筋の収縮と弛緩を繰り返しながらバランスを取っています。
このとき最も重要なのが、「身体の位置を感じ取る感覚(=固有感覚)」です。
関節や筋肉、皮膚の中にある受容器が、わずかな動きや圧力を脳に送り続けることで、自分の位置を常に更新しています。
ところが、デスクワークやスマホ操作で長時間同じ姿勢をとり続けると、感覚入力が偏り、身体は“正しい位置”を見失ってしまう。
その結果、支えやすい位置──つまり「楽に感じるけれど実は負担の大きい姿勢」に落ち着いてしまうのです。
さらに、呼吸も深く関わります。
胸郭の動きが制限されて浅い呼吸になると、首や肩の筋肉が“代わりに”働きすぎてしまう。
これが慢性的な肩こりへとつながります。
2021年の研究(Mansfield et al., Journal of Electromyography and Kinesiology)では、姿勢保持中の筋活動よりも「感覚入力の質」が肩周囲の負担に大きく影響することが報告されています。
つまり、“どう見えるか”よりも、“どう感じて支えているか”の方がはるかに重要なのです。
💡肩こりを軽くするには、どうすればいい?
肩こりを根本から改善するには、「姿勢を正そう」と力むより、感覚を取り戻すことから始めましょう。
・長時間の作業中、背中や腰で身体を支えていないか意識してみる。
・両肩を軽くすくめてストンと下ろし、肩甲骨を前後に動かす。
このわずかな動きが、固まった感覚を呼び戻します。
・1時間に1回は深呼吸。吸った空気が「背中側にも広がる」ように意識して。
胸郭が動けば、自然と首や肩の筋肉の負担が減ります。
また、正面や横から自分の姿勢を写真で撮ってみるのもおすすめです。
「まっすぐのつもりが、意外と前に傾いていた」──そんな気づきが、感覚と実際のズレを修正する第一歩になります。
🧠まとめ
「姿勢が悪いから肩がこる」のではなく、
「姿勢を保つ感覚が鈍っているから、姿勢が崩れる」。
形を直す前に、“どう支えているか”を感じ直すこと。
その小さな気づきが、肩こりの根っこを変えていきます。