更年期と肩こり・首こり~ホルモンバランスのゆらぎと血流・筋肉の関係~

更年期世代の女性が肩や首に手を当ててつらそうな表情をしながら椅子に座っている様子。肩こりと首こりに悩み少し不安そうにしているイメージ。

40代半ば〜50代にかけて、「前より肩こりが取れにくくなった」「首のつっぱりとだるさが一日中ついてくる」という相談がとても増えています。年齢のせい、と片づけてしまいやすい時期ですが、からだの中ではホルモン・血流・筋肉に、はっきりとした変化が起きています。
ここでは、更年期と肩こり・首こりの関係を整理しながら、「何が起きているのか」「どこまで自分でケアできるのか」を一緒に眺めていきましょう。


1. 「年齢だから」で片づけたくない、更年期世代の肩こり・首こり

更年期の年代(だいたい45〜55歳前後)になると、「前から肩こりはあったけれど、ここ数年で質が変わった気がする」という声をよく聞きます。

たとえばこんなパターンです。

  • 肩から首にかけて、じわーっと重さが続く
  • 湯船に浸かっている間は少し楽でも、すぐに戻ってしまう
  • こりだけでなく、頭痛・ほてり・寝つきの悪さもセットになっている
  • マッサージに行っても、その場しのぎになりやすい

日本の調査では、40〜60代の女性の4割以上が「肩こり・関節痛(腰・膝・手足)」を自覚していると報告されています。男女共同参画局
さらに、更年期症状を調べた国内の研究では、「疲れやすさ」と並んで「肩こり(肩のこわばり)」が、最もよくみられる訴えのひとつでした。サイエンスダイレクト+1

それだけ多くの方が悩んでいるからこそ、
「私だけがおかしいわけではないんだ」と、まずは少し肩の力を抜いていただきたいところです。

この記事では、
「ホルモンのゆらぎ」
「血流や筋肉の変化」
「生活習慣や自律神経」
といったいくつかの視点から、更年期と肩こり・首こりを整理していきます。


2. 更年期の肩こり・首こりを、いったん整理してみる

更年期というと、「ほてり・のぼせ・汗」「イライラ・落ち込み」のイメージが先行しがちです。ところが現場でお話を聞いていると、

  • 肩こり・首こり
  • 腰痛・関節痛
  • 冷え・だるさ

といった「筋肉・関節まわりの不調」が主役になっている方も少なくありません。

最近は「更年期の筋骨格症候群(musculoskeletal syndrome of menopause)」という言葉も使われるようになり、ホルモンの変化とともに、関節痛・筋肉痛・肩こりなどがセットで出やすいことが指摘されています。Taylor & Francis Online+1

一方で、よくある誤解や思い込みもあります。

  • 「更年期だから、何をしても仕方ない」
  • 「骨や関節がボロボロになっているに違いない」
  • 「ストレッチすれば全部解決するはず」

実際には、

  • ホルモンの変化
  • 仕事や家事の姿勢
  • 睡眠・ストレス・運動量の変化

こうした要素が重なり合って、肩こり・首こりの感じ方が強くなっているケースが多いです。

「更年期=すぐに重大な病気」というわけではありませんが、
・痛みが急に強くなった
・片側だけ強い痛みやしびれが出てきた
・腕が上がらない、力が入りにくい
といった場合には、整形外科などで一度チェックしておくと安心です。

ここからは、からだの中で何が起きているのかを、もう少し具体的に見ていきます。


3. ホルモン・血流・筋肉の変化から見る「更年期の肩こり」

3-1. エストロゲンと筋肉・関節の関係

更年期では、女性ホルモンの一種であるエストロゲンが急激に減っていきます。研究では、エストロゲンには「炎症をおさえる」「筋肉や骨の状態を守る」といった働きがあることが示されています。MDPI+1

エストロゲンが減ると、

  • 関節や筋肉に軽い炎症が起きやすくなる
  • 筋肉の量や力が落ちやすくなる
  • ちょっとした動きで「こり」「痛み」を感じやすくなる

といった変化が起きやすくなります。
「以前と同じ家事や仕事なのに、最近やけに肩がつらい」というのは、こうした背景も一つの要因です。

3-2. 血流と自律神経のゆらぎ

更年期の特徴のひとつが、「血管の収縮・拡張が急に変わる」ことです。ほてり・のぼせ・急な汗は、自律神経と血管反応のバランスが乱れたサインでもあります。

血流が不安定になると、

  • 首から肩甲骨まわりの筋肉に、十分な酸素や栄養が届きにくくなる
  • 老廃物が滞りやすく、だるさや重さとして感じられる

といったことが起こり、肩こり・首こりが長引きやすくなります。

日本の更年期に関する調査では、「肩こり・腰痛・手足の痛み」を訴える女性が高い割合で存在し、症状が中等度以上の方は、生活習慣の見直しや医療機関での相談が勧められています。厚生労働省+1

3-3. 筋肉のバランスと「守りの姿勢」

ホルモンや血流の変化に加えて、心理的なストレスや不安も、からだの「守りの反応」を強めます。

  • 呼吸が浅くなる
  • 首をすくめるような姿勢がクセになる
  • 肩を前に丸め、胸がつぶれた姿勢になりやすい

こうした姿勢が続くと、首の前後・肩甲骨まわり・胸の筋肉のバランスがくずれ、特定の筋肉にばかり負担がかかります。

実際、日本の更年期女性を対象とした研究では、「肩こり(肩のこわばり)」は疲労感と並んで最も頻度の高い症状であり、心理的ストレスや生活習慣とも関係しているとされています。サイエンスダイレクト+1

つまり、更年期の肩こり・首こりは、

  • エストロゲンの減少による「筋肉・関節の守りの弱まり」
  • 血流や自律神経のゆらぎ
  • ストレスに対するからだの防御反応としての姿勢

これらが重なって、「こりやすく・取れにくい」状態になっているとイメージしていただくと近いかもしれません。


4. いつもの生活パターンと、更年期の肩こり・首こりのつながり

ここからは、日常生活のパターンと肩こり・首こりの関係を見ていきます。

4-1. デスクワーク・スマホ時間が長い方

更年期の年代は、仕事でも責任が増えやすい時期です。
長時間のPC作業やスマホ利用が重なると、

  • 頭が前に出た姿勢が固定される
  • 首の後ろ・肩甲骨まわりの筋肉が常に引っ張られる
  • 目の疲れから、さらに首まわりをこわばらせる

といった悪循環が生まれます。

ホルモンの影響で筋肉の回復がゆっくりになっているところに、「同じ姿勢」が長く続くと、どうしてもこりが蓄積しやすくなります。

4-2. 家事・育児・介護との両立

40〜50代は、家事・育児・介護が重なる方も多い時期です。

  • 買い物袋やお子さん・お孫さんを片側で抱える
  • 中腰でのキッチン・掃除・洗濯
  • 介護での抱え上げや支え

これらはどれも、
「同じ側の肩・首に負担が集中しやすい動き」です。

更年期による筋力低下や疲労感が加わることで、「以前と同じ量の家事でも、肩こりのダメージが残りやすい」状態になっていきます。

4-3. 睡眠の質と夜間のこり

ほてりや寝汗、夜中の目覚めなど、更年期には睡眠の質が乱れやすくなります。
ぐっすり眠れないと、筋肉が回復する時間も不足してしまいます。

結果として、

  • 朝起きた瞬間から首・肩が重い
  • 寝ている間の食いしばりで、首まわりがカチカチになっている

といったパターンもよく見られます。

4-4. セルフケアで届くところ・専門家に任せたいところ

セルフケアで届く範囲のイメージ

  • 姿勢・生活リズムを少し調整してみる
  • 呼吸や力の抜き方を覚えて、こりをため込みにくくする
  • 軽い体操やストレッチで、「動かしている時間」を増やす

一度専門家に相談したいサイン

  • 夜も眠れないほどの強い痛みが続く
  • 腕が上がらない、しびれ・力の入りにくさが出てきた
  • どんどん痛みが強くなっている
  • 不安感・落ち込みが強く、日常生活に支障が出ている

こうしたときは、整形外科・婦人科などの医療機関と、整体・理学療法などのケアをうまく組み合わせていく方が安心です。

私自身、「整体りびるど」でお話を伺うときには、
からだだけでなく生活背景も一緒に整理しながら、「どこまで自分で整えられそうか」「どの部分は医療の力を借りた方がいいか」を一緒に考えていきます。


Q&A:更年期と肩こり・首こりでよくあるご質問

Q1. 更年期の肩こりがつらいとき、病院と整体どちらに行った方がいいですか?

A. どちらか一方ではなく、「役割が違う」と考えると整理しやすくなります。

  • 急に強い痛みが出てきた
  • 片側だけしびれる・力が入りにくい
  • 発熱・首の激しい痛みなど、いつもと違う症状がある

こうした場合は、まず整形外科や内科などの医療機関で原因を確認してもらうことをおすすめします。

一方で、検査では大きな異常がないけれど「こりやすさ・だるさが続いている」場合は、整体や理学療法で、姿勢・筋肉の使い方・呼吸のパターンを整えていくと、楽になる余地があることが多いです。


Q2. ホルモン治療をすれば、肩こりは必ず良くなりますか?

A. ホルモン補充療法(HRT)は、更年期症状に有効な場合がありますが、「肩こりだけが完全に消える」というより、全体的な不調が和らいだ結果として肩こりも軽くなる、というイメージに近いです。

関節痛や筋肉痛などの更年期症状に対して、ホルモン療法で症状が軽減したという報告もありますが、持病やリスクによっては適さない場合もあります。Taylor & Francis Online+1
興味がある方は、自己判断ではなく婦人科などでメリット・リスクをよく相談し、並行して日常の姿勢・運動習慣も見直していくのがおすすめです。


Q3. どのくらいつらくなったら、整体に相談してもいいのでしょうか?

A. 「我慢できなくなってから」よりも、

  • こり・だるさが1〜2か月以上続いている
  • 市販薬やストレッチだけではスッキリしない
  • からだの使い方のクセを一度見直してみたい

こう感じた時点で、一度相談してみてよいと考えています。

更年期の肩こり・首こりは、生活の工夫と専門家のサポートを組み合わせることで、「ゼロにはならなくても、かなり付き合いやすくなる」ことが多いです。整体に限らず、自分に合った相談先を一つ持っておくと、気持ちの面でも支えになるはずです。


5. 今日からできる、更年期世代の肩こり・首こりケアのヒント

最後に、今日から取り入れやすいセルフケアのヒントをいくつか挙げておきます。全部やろうとせず、「これならできそう」と思うものを一つ選んでみてください。

5-1. 「一気に頑張る」より「こまめに動かす」

更年期では、エネルギーの回復にも少し時間がかかるようになります。
週末にまとめて長時間運動するよりも、

  • 1時間に1回、首を前後・左右にゆっくり動かす
  • 肩甲骨を大きく回す時間を、1日数回つくる

といった「小さな動きの積み重ね」が、筋肉へのやさしい投資になります。

5-2. 深呼吸で「守りの姿勢」を一度リセット

肩こり・首こりが強い方は、無意識に浅い呼吸になっていることが多いです。

  • 椅子に浅めに座り、背もたれから少し離れる
  • 胸とお腹が一緒にふくらむイメージで、鼻からゆっくり吸う
  • 口から「ふー」と細く長く吐きながら、肩の力を抜いていく

これを1日3セット程度から始めてみてください。
呼吸が整うと、自律神経の「オン・オフ」の切り替えも少しスムーズになり、肩まわりのこわばりが和らぎやすくなります。

5-3. 「がんばりすぎスイッチ」に気づく習慣を

更年期は、仕事・家庭・自分のからだの変化がいっぺんに押し寄せやすい時期です。

  • つい残業を重ねてしまう
  • 家事を完璧にこなそうとしてしまう
  • つらさを我慢してしまう

こうした「がんばりすぎスイッチ」に気づけるだけでも、からだの緊張は少しずつ変わっていきます。

「今日はここまでできたら十分」と、自分にOKを出す練習も、立派なセルフケアです。

つらさが長く続くときや、「自分だけではどう整えたらいいか分からない」と感じるときには、無理を抱え込まず、整形外科や婦人科、整体などの専門家に相談してみるのも一つの方法です。からだの外側と内側、両方の視点からサポートを受けることで、肩こり・首こりとの付き合い方が少し変わってくるはずです。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
この記事があなたのより良い生活のための一助になりますように。

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