膝の音、放っておいて大丈夫?ポキポキ鳴るときに見るべき3つのこと|松本市
立ち上がるときにポキッ。階段ではミシミシ。しゃがむと、膝のお皿のあたりがジャリッと鳴る。痛くはないけれど、「このまま軟骨がすり減るのでは」と気になってしまう。
膝の音は、珍しいものではありません。2025年に発表されたシステマティックレビューでは、膝の軋轢音は一般集団の41%、痛みのない人でも36%にみられました。ただし、研究結果の確実性は「非常に低い」と評価されています。
同じレビューでは、膝の音と画像上の変形性膝関節症との関連も報告されています。つまり、「音がするから病気」とも、「痛くない音なら絶対に問題ない」とも言い切れません。個人の膝を判断するときは、音と一緒に痛みや腫れが出るか、引っかかるか、けがをした瞬間に大きな音がしたかまで見ます。
痛みはあるか。腫れていないか。膝は最後まで曲げ伸ばしできるか。体重をかけたときに抜ける感じはないか。この4点を先に確認します。
この記事では、膝がポキポキ鳴るときに見ておきたい3つの分かれ道と、日常でできる確認、整形外科へ相談したい目安を、松本市岡田の理学療法士が整理します。
膝の音だけで、軟骨の状態は分からない
「音が鳴るのは、骨と骨がぶつかっているからですか?」と聞かれることがあります。気持ちは分かります。静かな部屋でポキッと鳴れば、何かが削れたように感じますよね。
でも、膝の音だけを聞いて、軟骨がすり減っている、半月板が傷んでいる、変形性膝関節症が進んでいると決めることはできません。英国の公的医療情報でも、痛みを伴わない膝のクリック音は通常みられるものとして扱われています。
一方、先ほどのシステマティックレビューでは、膝の軋轢音がある人は、画像上の変形性膝関節症と関連する可能性も示されました。ただし、根拠の確実性は低い、または非常に低いとされています。大人数の傾向を、そのまま一人ひとりの診断には使えません。
一方で、変形性膝関節症では、痛み、水がたまる、動かしにくいといった症状がみられます。診断は音だけではなく、経過や診察所見、必要に応じたレントゲン検査などを合わせて行います。
膝の音が生まれる場所は一つではない
膝の中では、太ももの骨とすねの骨が動き、その前を膝のお皿が滑ります。周囲には靱帯や腱、半月板などもあります。音がどこから生じるかは一つではなく、本人が感じる「ポキッ」「ミシミシ」という表現だけで、どの組織の音かを特定することはできません。
だから、「ポキッならこれ」「ミシミシならこの病気」と、音の表現だけで原因を当てることはできません。同じ人でも、朝の一回目だけ鳴る日もあれば、階段では細かな音が続く日もあります。
いつから鳴り始めたのか。どの動作で鳴るのか。鳴った後に痛みが残るのか。腫れや熱っぽさはないか。ここが分かると、「少し様子を見られる音」と「先に診てもらいたい音」を分けやすくなります。
膝がポキポキ鳴るとき、見るべき3つの分かれ道
痛みも腫れもなく、いつも通り動ける
立ち上がりや屈伸で音はするものの、痛くない。膝は最後まで曲げ伸ばしでき、歩行や階段にも困っていない。この場合、音を消すために無理な運動や治療を始める必要があるとは限りません。
毎回鳴るかどうかを確かめるために、何度もしゃがむ方がいますが、それも不要です。普段の生活で変化がないかを見てください。
痛み、腫れ、引っかかり、膝崩れがある
音と同じタイミングで膝のお皿周りが痛む。鳴った後に腫れる。途中で引っかかり、伸ばしにくい。体重をかけると膝がカクッとする。こうした場合は、単なる「鳴りやすい膝」として片づけない方がよいでしょう。
半月板の損傷では、痛みや腫れのほか、引っかかりやロッキングがみられることがあります。変形性膝関節症でも、痛みや腫れ、動かしにくさが起こります。ただし、症状から自分で病名を決めるのではなく、整形外科で状態を確認することが先です。
ひねった、着地した、転倒したときに「バキッ」と鳴った
スポーツ中の切り返しや着地、転倒などで大きな音や感覚があり、その後に腫れ・痛み・不安定感が出た場合は、普段のポキポキ音とは分けて考えます。
日本整形外科学会は、膝のけがでは靱帯や半月板、軟骨の損傷が隠れていることがあり、痛みが軽いから、歩けるようになったからという理由だけで大丈夫とは判断できないと説明しています。運動へ戻る前に診察を受けてください。
音が鳴る場面を分けてみる
椅子から立つときだけ鳴る
立ち上がりでは、身体を足の上へ移しながら、膝と股関節を伸ばします。低い椅子ほど膝が深く曲がった位置から始まるため、音が出やすく感じることがあります。
音だけで困っていないなら、鳴らさない立ち方を探し続ける必要はありません。痛みもある方は、椅子から立つ瞬間に膝が痛いときの記事で、椅子の高さや足の位置を見直してみてください。
階段やしゃがむときにミシミシ鳴る
階段やしゃがむ動作では、膝のお皿周辺にも負荷がかかります。細かな音だけなのか、お皿の周りの痛みもあるのかを分けます。
階段の下りで痛みがある場合は、音を消すことより、安全に体重を下へ移せるかが大切です。階段を下りると膝が痛いときの記事も参考にしてください。
曲げ伸ばしの途中で一度だけ引っかかる
膝を動かす途中で毎回同じところに引っかかる。音と一緒に痛みが走る。動かした後に腫れる。この場合は、音を出して引っかかりを外そうとせず、整形外科へ相談してください。
膝裏のつっぱりや膨らみもある方は、膝の裏が痛い・つっぱるときの記事もご覧ください。
音が気になるときに避けたいこと
音が消えるまで何度も曲げ伸ばしする
一度鳴ると、もう一度確かめたくなるものです。でも、音を再現するために深いスクワットやひねりを繰り返す必要はありません。確認するほど痛みや腫れが増えるなら、その確認自体をやめます。
「軟骨が削れる」と怖がって、まったく動かさない
痛みのない音だけを理由に、歩くことや普段の活動を全部やめる必要もありません。音をゼロにすることを目標にすると、本来できていた動きまで避けやすくなります。
普段通り動けるなら、まずは生活を続けながら様子を見ます。ただし、痛みや腫れが増える動作は量を減らし、無理に続けないでください。
動画だけで病名を決める
「この音は半月板」「このミシミシは変形性膝関節症」と断定する動画もありますが、音声だけで診断はできません。診察では、けがの有無、痛む場所、腫れ、動く範囲、不安定感などを合わせて見ます。
音と一緒に痛むか/膝が腫れるか/最後まで曲げ伸ばしできるか/歩くと膝が抜ける感じがあるか。
整形外科へ相談したい症状
受診目安は、全部を同じ「そのうち病院へ」にまとめない方が分かりやすいです。
当日中に医療機関へ相談したい状態
- 転倒、ひねり、着地の後から体重をかけられない
- 膝が引っかかったまま、曲げ伸ばしできない
- 膝が急に大きく腫れた、形が変わった
- 赤く熱を持ち、発熱や悪寒、体調不良もある
こうした場合は、音を消すためのストレッチやスクワットを試さず、医療機関へ相談してください。受診先や時間帯に迷う場合は、地域の救急相談窓口へ確認します。
急を要さなくても、整形外科で確認したい状態
- 音と同時に痛みが出る状態を繰り返す
- 膝崩れや引っかかりが続いている
- 腫れが繰り返す、または引かない
- 痛みや動かしにくさが、生活や睡眠に影響している
- けがの後、一度は歩けても不安定感が残っている
「まだ歩けるから」と待ち続ける必要はありません。膝をひねって音を確かめたり、無理に伸ばして引っかかりを外したりせず、経過を伝えて診てもらいましょう。
整体りびるどで確認すること
医療機関で大きな損傷が否定されていても、階段や立ち上がりのたびに音と痛みが出る。音が怖くて、膝を曲げられなくなってきた。そうした悩みはご相談いただけます。
私が見るのは、「膝が鳴ったか、鳴らなかったか」だけではありません。どの深さで音が出るのか。その前後で痛みや力の入り方は変わるのか。足首や股関節も使えているか。立ち上がり、階段、歩行など、困っている動作の中で確認します。
動き方を変えて音が減ることはあります。ただ、それだけで膝の中の組織が治ったとは言えません。反対に、音が残っていても、痛みが減り、生活動作が楽になることもあります。目標は「無音の膝」ではなく、安心して使える膝です。
整体では、靱帯損傷や半月板損傷、変形性膝関節症などの診断はできません。腫れ、ロッキング、膝崩れ、外傷後の症状がある場合は、施術より受診をおすすめします。
膝の音について、よくある質問
Q.膝がポキポキ鳴ると、将来必ず変形性膝関節症になりますか?
A.音だけで将来の発症を決めることはできません。研究では膝の軋轢音と画像上の変形性膝関節症との関連が報告されていますが、根拠の確実性は低い、または非常に低いとされています。個人の診断では、症状や診察所見、画像検査などを合わせます。痛みや腫れ、動かしにくさが出てきた場合は相談してください。
Q.音を鳴らさない方がいいですか?
A.普段の動作で自然に鳴る、痛みのない音まで避け続ける必要はありません。ただし、自分で強くひねる、深く曲げて何度も鳴らすといった行為は勧めません。
Q.筋トレをすれば音は消えますか?
A.運動で動きやすくなる場合はありますが、音が必ず消えるとは言えません。痛みがある方は、音を消すためにスクワットの回数を増やすのではなく、膝の状態と負荷のかけ方を確認してください。
Q.片方の膝だけ鳴るのは異常ですか?
A.左右差があるだけでは異常とは判断できません。片側だけに痛み、腫れ、引っかかり、膝崩れがあるなら、その左右差は受診時に伝える大切な情報になります。
まとめ|音を消すより、一緒に起きていることを見る
膝がポキポキ、ミシミシ鳴っても、音だけで膝の病気や軟骨の状態は分かりません。痛みも腫れもなく、いつも通り動けるなら、音を確かめ続けず普段の生活で変化を見てください。
一方で、音と一緒に痛む、腫れる、引っかかる、膝が抜ける。あるいは、けがの瞬間に大きな音がした。こうした場合は、セルフケアで音を消そうとせず、整形外科で状態を確認する方が先です。
ご相談の際は、音の表現よりも「どの動作で鳴るか」「痛みや腫れもあるか」「いつから変わったか」を教えてください。診察が必要な状態を見落とさないことを前提に、立ち上がりや階段、歩き方の中で変えられるところを一緒に探します。
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- Couch JL, et al. Noisy knees – knee crepitus prevalence and association with structural pathology: a systematic review and meta-analysis. Br J Sports Med. 2025.
- NHS「Knee pain」
- 日本整形外科学会「変形性膝関節症」
- 日本整形外科学会「半月(板)損傷」
- 日本整形外科学会「膝関節捻挫」
- American Academy of Orthopaedic Surgeons「Management of Acute Isolated Meniscal Pathology」
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の診断や治療の代わりになるものではありません。







