噛みしめグセ・歯ぎしりと肩こりの関係~あごまわりの緊張が首と肩に伝わるワケ~
「朝起きると、なぜか肩がパンパン」「歯医者さんに“噛みしめが強いですね”と言われたことがある」。そんな方は、あごまわりの緊張と肩こりが静かにつながっている可能性があります。
ここでは、噛みしめグセ・歯ぎしりと肩こりの関係を、からだの仕組みと生活習慣の両面から整理しつつ、「まずここから試してみよう」という小さなヒントをまとめてみました。
目次
1. 「噛みしめが強い人ほど肩がつらい」そんな相談が増えています
ここ数年、整体の現場でも「肩こりで来たけれど、よくよく聞くと噛みしめグセが強い」という方がとても増えました。
たとえば、こんなパターンです。
- 日中、仕事中に気づくと歯をグッと合わせている
- 夜、家族に「歯ぎしりしてたよ」と言われる
- 朝起きたとき、あごのだるさと首こりがセットで出ている
ご本人としては「肩こりの原因はデスクワークかな」と思っていても、実際には「噛みしめ」と「姿勢のクセ」がセットになって、首から肩にかけての筋肉にずっと力が入り続けていることが少なくありません。
この記事では、
- 噛みしめグセ・歯ぎしりと肩こりがどうつながるのか
- 放っておいても大丈夫なパターンと、注意したいサイン
- 今日からできる簡単なセルフケアの方向性
を、できるだけ専門用語をかみ砕きながらお伝えしていきます。
「整体に行くべきなのかな…」と迷っている方にも、まずは状況を整理する材料になればうれしいです。
2. 噛みしめグセ・歯ぎしりと肩こりの“よくある誤解”
「歯ぎしりをしていると、必ず肩こりになる」
「噛みしめグセはストレスだけが原因」
こうしたイメージを持たれている方も多いのですが、少し整理してみると、もう少しやわらかい見方ができます。
噛みしめ=悪者、ではない
もともと、歯とあごは「食べる・話す・飲み込む」といった生活の要となる動きを支えています。
食事中にある程度の力が入るのは自然なことですし、スポーツの瞬間的な力みで食いしばることも、からだの仕組みとしては想定内です。
問題になりやすいのは、
- 何もしていないのに上下の歯が当たり続けている
- 寝ている間に、必要以上の強い力で歯ぎしり・食いしばりが続いている
といった「長時間の噛みしめ」が習慣になっているケースです。
「肩こりの原因は全部あご」というわけでもない
逆に、「肩こりがあるのは全部噛みしめのせいだ」と決めつけてしまうのももったいないところです。
肩こりには、姿勢・運動不足・冷え・ストレス・内科的な要因など、いろいろな要素が重なります。
噛みしめグセ・歯ぎしりはその中の「一つのピース」。
ただし、首や肩の筋肉と神経でつながっているため、そのピースが思ったよりも大きく影響している方が少なくない、というイメージです。
「年齢のせい」と片づける前に
40〜50代以降になると、「朝起きたときの首こり・肩こり」を年齢のせいにしてしまいがちです。
しかし、歯の治療歴や噛み合わせの変化、更年期のホルモンバランスの変化などと一緒に、「噛みしめぐせ」がじわじわ強くなっていることもあります。
一度、
- 朝起きたときのあごの感じ
- 日中ふとしたときの歯の接触
を意識してみると、「あ、結構噛んでるかも」と気づくきっかけになるかもしれません。
3. 噛みしめグセ・歯ぎしりが首と肩に伝わるメカニズム
ここからは、からだの中で起きていることを少しだけ深掘りしてみます。難しい用語はできるだけ生活の言葉に置き換えていきますね。
咀嚼筋と首・肩の筋肉は“チーム”で働く
歯をグッと噛みしめるときに働く主な筋肉は、
- 咬筋(ほほ骨の下からあごに向かう筋肉)
- 側頭筋(こめかみ〜耳の上あたりの筋肉)
など、いわゆる「咀嚼筋」です。
これらの筋肉は、首の前や横の筋肉、後頭部から首にかけての細かい筋肉と連携しながら、頭の位置を支えています。
頭はボウリングの玉ほどの重さがあるといわれますが、その重さを支えるために、あご・首・肩の筋肉が“同じチーム”として動いているイメージです。
眠っている間に強い歯ぎしりや食いしばりが続くと、咀嚼筋だけでなく、首〜肩の筋肉も一緒に緊張しっぱなしになります。その結果、朝から肩こりを感じやすくなります。
姿勢とあごの位置の関係
スマホやパソコンで頭が前に出た姿勢が続くと、下あごは後ろに押し込まれやすくなります。
このとき、咀嚼筋や首の前側の筋肉には、じわじわとした引っ張られ方・縮められ方のストレスがかかります。
頭が前に出た姿勢で噛みしめを続けると、
- 顎関節まわりに負担がかかる
- 首の後ろの筋肉が常に張り詰める
- 肩甲骨まわりが固まり、肩こりが慢性化しやすい
といった“流れ”が生まれます。
「姿勢のゆがみ」が直接の悪者というより、
- 姿勢の変化
- 噛みしめグセ
がセットで続くことで、首と肩の負担が積み重なっていく、と捉えるとイメージしやすいかもしれません。
ストレス・自律神経と歯ぎしりの関係
歯ぎしりや食いしばりは、ストレスとの関係もよく指摘されています。
いくつかの研究では、精神的ストレスの高い人ほど、「睡眠中の歯ぎしり(ブラキシズム)」が生じやすい傾向があると報告されています。
自律神経のバランスが乱れると、
- 眠りが浅くなる
- 無意識の緊張が抜けにくくなる
- 筋肉への血流が滞りやすくなる
といった変化が起こりやすく、結果的に「肩こり・首こりが取れない」という形で表に出てくることがあります。
国内の調査でも、ストレスが強い人ほど肩こりや腰痛などの“自覚症状”を訴えやすいという結果が出ており、噛みしめグセ・歯ぎしりもその一部として考えることができます。
数字で見る「歯ぎしりは意外と多い」
海外の疫学研究では、睡眠中の歯ぎしりを含む「ブラキシズム」は、成人の約8〜16%程度にみられると報告されています。
さらに、「日中の食いしばり」も含めると、
- 自分では気づいていない“噛みしめ習慣”がある人はもっと多い
と考えられています。
つまり、「自分だけがおかしい」のではなく、
現代の生活スタイルやストレス環境の中では「よくある反応」のひとつだと知っておくことも大切です。
4. よくある生活パターンと噛みしめ・肩こりのつながり
次に、日常の中で「噛みしめグセ・歯ぎしり」と肩こりがセットになりやすいパターンをいくつか挙げてみます。
デスクワーク+集中しすぎるタイプ
- パソコン作業や細かい手作業に没頭する
- 気づくと、上下の歯がピタッと合わさっている
- 仕事が立て込むと肩〜首が鉄板のようになる
こうした方は、「集中=全身にギュッと力が入る」スイッチが入りやすい傾向があります。
噛みしめが長時間続くことで、首の前後の筋肉のバランスが崩れ、肩こりが慢性化しやすくなります。
眠る前までスマホ・考えごとが止まらないタイプ
- 布団に入ってからもスマホを見続けてしまう
- 寝つきは悪くないが、朝のスッキリ感がない
- 家族に「歯ぎしりしてるよ」と言われる
夜遅くまでのスマホや考えごとは、自律神経を“緊張モード”に偏らせやすく、睡眠の質を下げます。
眠りが浅いと、睡眠中の歯ぎしり・食いしばりも出やすくなり、結果的に「朝の肩こり」を強く感じる人が多くなります。
真面目で我慢強いタイプ
- 人前で感情を出すのが苦手
- 頼まれごとを断りにくく、つい引き受けてしまう
- からだの不調を“まだ大丈夫”と後回しにしがち
こういった性格の方は、「心の中の緊張」が顔やあごの筋肉に現れやすいことがあります。
表情を作る筋肉・噛む筋肉・首の筋肉はつながっているので、長年のクセとして「いつもどこかに力が入っている状態」が染みついてしまうこともあります。
整体りびるどでも、「噛みしめをゆるめるために、まずは呼吸や表情の力みからアプローチする」ということがよくあります。
Q&A:よくあるご質問
Q1. 噛みしめや歯ぎしりがあるとき、歯医者さんと整体どちらに行けばいいですか?
噛みしめグセ・歯ぎしりそのものに対しては、まず歯科(特に噛み合わせ・顎関節を診てくれる歯科)で相談することをおすすめします。
歯や顎関節に問題がないか、ナイトガード(マウスピース)の適応がないかをチェックしてもらうことが大切です。
一方で、
- 肩こり・首こり・姿勢のクセ
- 呼吸の浅さや全身の緊張
の部分は、整体や理学療法の視点が役に立つことが多いです。
「歯科で噛み合わせを整えつつ、整体でからだ全体の使い方を見直す」という組み合わせも良い選択肢です。
Q2. 放っておくと、どんなリスクがありますか?
すべての噛みしめグセが重大な病気につながるわけではありませんが、
- 歯のすり減り・欠け
- 顎関節症(口の開けにくさ・あごの痛み・音)
- 慢性的な頭痛・首こり・肩こり
といった症状が出やすくなります。
特に、口を大きく開けたときの痛みや、ガクッという音が続く場合、片側だけの強い顔面痛などがある場合は、早めに歯科や口腔外科を受診しておくと安心です。
Q3. どのくらいつらくなったら、整体に相談してもいいのでしょうか?
「病院に行くほどではないけれど、ずっと肩や首が重い」「噛みしめグセが気になってきた」という段階で相談いただいて大丈夫です。
早い段階で、
- 姿勢や肩甲骨の動き
- あごまわりの筋肉の緊張
- 呼吸の浅さ
を一度見直しておくと、こじらせにくくなります。
逆に、突然の強い痛みやしびれ、めまい・ふらつきなどを伴う場合は、まず医療機関でのチェックを優先してください。そのうえで、「からだの使い方」を整える選択肢として整体を利用していただくと安心です。
5. 今日から取り入れやすい「噛みしめ+肩こり」ケアのヒント
最後に、今日からでも少しずつ取り入れやすいポイントをいくつか挙げてみます。全部を完璧にやる必要はありません。できそうなところから一つずつで十分です。
1)「歯と歯のすき間」を思い出す時間をつくる
本来、リラックスしているときは、上下の歯は軽く離れています。
デスクワーク中や家事の合間に、「今、歯くっついてないかな?」と一日数回チェックし、気づいたらそっと歯と歯のすき間を作る癖をつけてみましょう。
「唇は閉じて、歯は離す」がひとつの目安です。
2)あごと首の“セットストレッチ”をやさしく
強くグイグイ伸ばす必要はありません。
- 椅子に座り、背すじを軽く伸ばす
- 顎を少しだけ引き、首の後ろをスッと長くするイメージを持つ
- 上の歯と下の歯の間に、薄い紙1枚分のすき間をイメージしながら、ゆっくり鼻から呼吸する
このとき、ほほ骨の下やこめかみを手のひらでやさしく包み込むように触れてあげると、咀嚼筋がゆるみやすくなります。
3)寝る前30分だけでも“緊張をほどく時間”を
眠る直前までスマホやPCの画面を見ていると、自律神経が緊張モードのままになりやすくなります。
- 照明を少し落とす
- スマホは充電器の上に置いておく
- 温かいお茶を少し飲みながら深呼吸をする
こうした小さな工夫だけでも、睡眠の質が少しずつ整い、結果として歯ぎしり・食いしばりの頻度が変わってくる方もいます。
噛みしめグセ・歯ぎしりと肩こりの関係は、「あごだけ」「肩だけ」と切り離して考えるよりも、からだ全体の使い方・心の状態も含めて見ていったほうが、答えが見つかりやすくなります。
つらさが長引くときや、自分ではどう整えたらいいか分からないときは、歯科や医療機関とあわせて、整体や理学療法士などの専門家に相談してみるのも一つの方法です。からだの声を一緒に整理してくれる伴走者がいるだけで、安心感がぐっと変わることがあります。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
この記事があなたのより良い生活のための一助になりますように。







