デスクワークで肩こりが悪化するのは、動かないせい?【深堀りQ&A】
A.「動かないこと」よりも、「感じないこと」の方が大きな原因です。
確かに長時間同じ姿勢でいると血流は滞ります。
けれど、本当の問題は“身体の位置感覚が鈍くなっていること”。
動かない時間が長いほど、筋肉よりもまず感覚の鮮度が落ちてしまうのです。
🔍なぜ“動かないこと”より“感じないこと”が問題なの?
私たちの身体は、常に重力の中で微細に動き続けています。
じっと座っているつもりでも、呼吸や体重移動によって、骨盤・胸郭・肩甲骨などは少しずつ揺れているのです。
ところが、集中して作業をしていると、この微細な揺れを“感じ取る感覚”が鈍くなります。
その結果、身体は「動いていない」と勘違いし、特定の筋肉だけが支え続ける状態になります。
特に肩まわりでは、僧帽筋上部や肩甲挙筋が過剰に働きやすく、首から背中にかけての張り感が生じます。
2018年の研究(Caneiro et al., Pain Reports)では、
姿勢維持における「感覚フィードバックの低下」が肩や腰の慢性痛に深く関わることが示されています。
つまり、長時間座っていることで問題になるのは、**「筋肉が固まること」ではなく「感覚の更新が止まること」**なのです。
💡どうすれば“感じる身体”を保てるの?
ポイントは、姿勢を変えることよりも、感覚を動かすことです。
・1時間に1度は、背中や骨盤を軽く揺らすように座り直す
→ 動きをつけるというより、「支え方を変える」イメージで。
・呼吸のたびに肋骨が前後左右に広がる感覚を意識する
→ 胸郭が動くと、肩や首の筋の過緊張が自然に抜けていきます。
・ときどき、足裏を床にしっかり押し込む
→ 下からの支持を感じることで、上半身の力が抜けやすくなります。
これらの小さな動きが、感覚入力をリセットし、脳に「今、ここにいる」という情報を送り直します。
それによって、必要な筋肉だけが働き、不要な力みが減っていくのです。
🧩「動きの量」より「感覚の質」を整える発想
多くの人が“運動不足=肩こりの原因”と考えがちですが、
実際は**動きの量ではなく、動きの質(感覚の明瞭さ)**が鍵になります。
どんなにストレッチや体操をしても、
自分の身体の位置を正確に感じ取れていなければ、動きはすぐに元のパターンに戻ってしまいます。
逆に、ちょっとした姿勢の変化でも“感覚が伴っている動き”なら、それがリセット効果を生みます。
身体を整えるとは、「動かすこと」ではなく「感じ直すこと」。
これは、理学療法の現場でも最も大切にされている視点のひとつです。
🧠まとめ
デスクワークで肩こりが悪化するのは、動かないせいではなく“感じなくなるせい”。
感覚を更新できなくなることで、同じ筋肉に負担がかかり続けるのです。
こまめな体操よりも、「自分の身体の位置を思い出す時間」を。
1日の中で何度か、“支えている感覚”をリセットしてみてください。
それだけで、肩の軽さは驚くほど変わります。

